2019年5月25日(土)
宮沢賢治署名入り初版本 教え子の遺族らが寄贈
岩手・花巻
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宮沢賢治が自費出版をした詩集『心象スケッチ 春と修羅』の献呈署名入り初版本が24日、岩手県花巻市に寄贈されました。賢治の農学校教諭時代の教え子の安藤寛(かん)(旧姓・桜羽場=さくらはば=)に宛ててサインし、自宅を訪れて直接渡した物です。
40年前に寛から初版本を譲り受けて保管してきた、娘の廣田ゆき子さん(71)、その夫の政司さん(72)、寛の息子の安藤實さん(86)が市役所を訪問。上田東一市長に手渡し、懇談しました。同席した宮沢賢治記念館の学芸員によると、「署名入りの初版本はとても少なく、教え子と教師という温かい関係が想像される」といいます。
賢治は1924年4月に、自費で『春と修羅』(定価2円40銭)を1000部出版。一部の文学人には高く評価されたものの、一般の書店では、まったく売れませんでした。
賢治は売れ残った本を引き取り、親しい人や購入希望者へ贈呈。今回の初版本には鉛筆で賢治と寛の名前、贈呈日の「五月十三日」が記されています。
ゆき子さんは「無事に寄贈できて肩の荷が下りました。父も賢治先生も喜んでいると思う」と語り、上田市長は「花巻市の宝です。全国の賢治ファンからも注目される」と感謝の言葉を述べました。