2019年5月2日(木)
主張
「後期医療」制度
高齢者苦しめる負担増やめよ
財務省が先週、社会保障費の圧縮・削減に向けた案を示しました。75歳以上の後期高齢者医療制度の窓口負担の1割から2割への引き上げなど、高齢者に痛みを強いる中身が盛り込まれています。同制度の窓口負担増は、財務省が繰り返し求めてきたものですが、国民の反対で実施できなかったものです。それをまたもや持ち出してきたのは、とにかく高齢者に負担を押し付けたい執念のあらわれです。頼りの年金も目減りするなど高齢者の生活苦が続くもとで、新たな負担増は格差と貧困に拍車をかけることにしかなりません。
“痛みを感じる”仕組み
財務省の社会保障費カットの具体案は4月23日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)分科会に示されました。75歳以上の人は医療費が多くかかることなどを強調し、「まずはできる限り速やかに75歳以上の後期高齢者の自己負担について原則2割負担とすべき」と記しています。その際、新たに75歳になった人から負担を増やすだけでなく、「すでに後期高齢者となっている者についても、数年かけて段階的に2割負担に引き上げるべき」と迫っています。“病気になりがちな人が多くて、医療費がかさむから、自分たちでその分を負担せよ”という発想です。
もともと後期高齢者医療制度は、公的医療費への国の財政支出を削るための「医療構造改革」の一環として2008年に開始されたものです。75歳以上の高齢者(65~74歳の障害者は申請)を対象にし、75歳になると、それまで入っていた国民健康保険や協会けんぽなどから脱退させられ、「後期医療」に加入することになりました。現在約1700万人が入っています。
制度発足前、厚生労働省幹部は「医療費が際限なく上がり続ける痛みを、後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただく」と発言しました。それはすでに現実のものとなってすすんでいます。75歳以上の人口が増えると保険料がアップする仕掛けのため、保険料の引き上げ傾向が続いています。年金から天引きされる保険料の増加で暮らしは圧迫されるばかりです。
天引き対象でない低所得者の保険料滞納は毎年20万人以上にのぼります。滞納が続き正規の保険証を取り上げられ、有効期間が短い保険証に切り替えられた人は2万人を超えています。滞納した人への差し押さえも増加しています。
こんな実態であるにもかかわらず、安倍晋三政権は今年10月、低所得者の保険料軽減措置を容赦なく廃止する計画です。2~3倍の負担になる人も出ます。さらに75歳以上の窓口2割負担にされれば、経済的理由により、ますます必要な医療を受けられなくなってしまいます。高齢者の健康と命を脅かす負担増は許されません。「後期医療」制度を廃止し元の老人保健制度に戻し、際限ない保険料アップの仕組みなどをなくすべきです。
選挙での審判が不可欠
財務省は「後期医療」だけでなく介護、年金の改定案を示しています。安倍政権は7月の参院選後に改悪の動きを加速しようとしています。選挙での負担増ノーの審判が不可欠です。“消費税増税は社会保障のため”という口実はもはや成り立ちません。消費税に頼らず、大企業や富裕層に応分の負担を求めて財源を確保し、社会保障を拡充させることが必要です。