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2019年4月25日(木)

主張

温暖化対策政府案

原発推進の固執から脱却せよ

 地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」にもとづき、政府が国連に提出を求められている温室効果ガス排出抑制についての長期戦略案が公表されました。「脱炭素化」を掲げているものの、CO2排出が多い石炭火力発電をやめる方向は示していません。さらに温暖化対策にかこつけて、原発を推進する姿勢を鮮明にしました。世界の「脱炭素化」の流れから立ち遅れたうえ、「原発ゼロ」を願う国民世論にも逆らう長期戦略づくりは認められません。

石炭火力「全廃」もなし

 2016年発効のパリ協定は、産業革命前よりも世界の平均気温の上昇を2度よりも十分低く保ち、1・5度以内に抑える努力をする目標を立てました。今世紀後半には温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にすることをめざしています。国連に長期戦略が未提出なのは主要国で日本とイタリアだけです。

 安倍晋三政権は、6月に大阪で開かれるG20サミット(20カ国・地域首脳会議)を前に、長期戦略を決定するため、政府内に有識者会議を設けるなどして議論を重ねてきました。今月2日に有識者会議は、政府に「提言」を出し、それを土台に今回の長期戦略案がまとめられました。

 「提言」自体が、石炭火力発電を温存する内容だったことに加え、原発についても「幅広い技術的選択肢」の一つとして、「活用について議論が必要」と前のめりの姿勢でした。

 重大なことは、今回の戦略案が原発について、「提言」の表現よりも踏み込んで「原子力の利用を安定的に進めていく」と打ち出したことです。原発再稼働を進める際には「国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」との記述まであります。

 「もんじゅ」(福井県)の失敗をうけた高速炉や、小型炉、高温ガス炉などを列挙して、「原子力関連技術のイノベーション(技術革新)を促進」とものべています。8年前の東京電力福島第1原発事故を忘れ去った態度というしかありません。

 財界団体・経団連が8日に原発「新増設」などを求める提言を出しましたが、その口実に持ち出した柱の一つが、「温暖化対策」でした。長期戦略案づくりと軌を一にしています。

 「脱炭素化」のために原発推進を求める財界の主張は、あまりにご都合主義です。

 今回の長期戦略案づくりの過程では、当初は石炭火力を「全廃」する文言があったのに、財界からの要求で「依存度を可能な限り引き下げる」と変更させられたと伝えられ、大問題になっています。

 世界的にも高コストで見直しが進む原発にあくまでしがみつき、「脱炭素化」の重大な障害となっている石炭火力発電にこだわる姿勢から転換しなくては未来への責任は果たせません。

エネ計画から決別を

 原発と石炭火力発電をベースロード(基幹)電源と明記した安倍政権のエネルギー基本計画の弊害はいよいよ明白です。基本計画から決別しなくては真剣な温暖化対策の道は開けません。

 安倍政権は国民からの意見公募をへて、長期戦略を6月までに正式決定する計画ですが、根本からの見直しこそが必要です。


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