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2019年3月6日(水)

主張

被災者の住宅再建

支援強化へ抜本的拡充が急務

 最大震度7を観測し、全道停電を引き起こした北海道胆振(いぶり)東部地震からきょうで半年です。関西をはじめ各地に強風被害をもたらした台風21号の直撃からも4日で半年です。被害にあった地域ではいまも爪痕が深く、とりわけ問題になっているのは住宅被害です。北海道では強い揺れや液状化などで自宅が壊された人たちの避難生活が続き、関西では強風で損壊した屋根などの修繕もままならない人たちが多く残されています。しかし、現在の国の制度は、住宅再建をめざす人を支えるには極めて不十分です。被災者が希望を持てる制度へ抜本的改定が急がれます。

深刻な被害に見合わず

 昨年9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震は、死者42人、重軽傷者700人以上の人的被害とともに、全壊約460棟、半壊・一部損壊を含めた住宅被害は1万4千棟を超えました。住宅被害では、土砂崩れや揺れによる倒壊にとどまらず、札幌市清田区では液状化が地域一帯で発生、家が激しく傾くなどの事態を生みました。

 厳しい冬を仮設住宅で暮らした人たちの中には体調を崩す人も少なくありません。心身ともに疲弊している被災者の命と健康を守り、生活を支えるきめ細かな対策がますます重要になっています。

 被災者にとって深刻なのは、住宅再建の見通しが持てないことです。とくに高齢世帯や住宅ローンが残っている人などは新たな負担ができる余裕はありません。被災者が住み慣れた地域で自宅再建ができるよう、国・自治体が役割を果たすことが不可欠です。

 1995年の阪神・淡路大震災を契機にした市民運動の高まりを受け、「被災者生活再建支援法」が98年に成立、99年から適用されました。その後、一定の制度改正が行われ、全壊・大規模半壊に最大300万円支給などの仕組みにはなりました。しかし現状は、「住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資する」(同法)ことにふさわしい規模ではありません。再建に必要な費用と支給額の差があまりに大きいだけでなく、半壊や一部損壊が支給対象外になっていることが、実際の被害の姿とかみ合っていないのです。

 全国知事会は昨年11月、被災者生活再建支援制度の見直しを求める提言をまとめました。大規模半壊の損害額は約1400万円、半壊の修繕費は約200万~300万円にのぼる例などを示し、対象を半壊に拡充することなどを要求しています。また、対象を全壊10世帯以上の市町村にするなどの運用原則によって、同じ災害にあった自治体間で支給・不支給の差が出る矛盾も問題になっています。台風21号では大阪などの住宅被害は一部損壊がほとんどで支援法が適用されなかったため、制度の改善を求める声が上がっています。

法改正は待ったなし

 支援法適用から20年、抜本的な見直しに向けた議論が必要です。支援金を当面500万円へ増額し、対象を半壊などに広げる法改定は待ったなしです。「個人の私有財産は支援しない」という国の姿勢は、この間の被災者の取り組みで崩れつつあります。大規模災害が相次ぐ日本で、被災者の命と暮らし、生活の基盤を守るために、従来の枠組みにとどまらない思い切った対策をすすめることが、災害大国・日本の政治の責任です。


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