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2019年2月21日(木)

外科医に無罪判決

東京地裁 「術後せん妄の可能性」

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(写真)無罪判決の旗を掲げる支援者ら=20日、東京都千代田区

 東京都足立区の柳原病院で2016年、手術直後の女性患者の胸をなめたなどとして、準強制わいせつ罪に問われた外科医師(43)の判決が20日、東京地裁であり、大川隆男裁判長は「事件があったとするのには、合理的な疑い」があるとして、無罪(求刑懲役3年)としました。

 裁判は、被害を受けたとする女性患者の証言が全身麻酔から覚める過程で起きる「術後せん妄」による幻覚かどうかが争点となりました。

 判決は「せん妄状態に陥っていた可能性は十分にあり、患者がせん妄に伴って性的幻覚を体験していた可能性も相応にある」としました。

 検察側は、患者の左胸に唾液が付着しており、そこから外科医師のDNA型が検出されたと主張していました。これに対し判決は、手術前の触診や、外科医師と助手の医師が会話した際に、唾液が付着した可能性を指摘しました。

 裁判では、科学捜査研究所がDNA型の抽出液を廃棄し、再検証ができなくしたことなど鑑定のずさんさが次つぎと明らかになりました。数値などを記録するワークシートは、データのねつ造を防ぐため、鉛筆を使いません。しかし、今回のワークシートは鉛筆で記入され、消しゴムで消した跡が複数ありました。これについて判決は「検査者としての誠実さに疑念がある」と強く批判しました。

 判決後の記者会見で医師は「ホッとしました。肩の荷がようやく下りたような気分です」と語りました。

 弁護団の高野隆弁護士は「この事件では、まともなデータも示さず、実験の再現もなかった。他の科学者が同じ手法で調査して同じ結果が出る再現性がなければ科学ではない」と強調しました。


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