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2019年2月10日(日)

主張

統計不正の解明

国民裏切ったことに無反省か

 厚生労働省による毎月勤労統計調査の偽装をはじめとする統計不正問題は、安倍晋三政権の隠ぺい姿勢によって実態の解明が進みません。野党が要求した厚労省の前政策統括官らの国会招致に、政府・与党はようやく応じたものの、解明には後ろ向きのままです。のべ約2000万人の雇用保険の給付などに影響を与えた上、政策判断の根幹にかかわる統計不正で、政府の信用を根底から破壊したという深刻な事態を本当に反省しているのか。おざなりの対応で、やりすごすことは許されません。

「信頼揺らいだ」7割

 「政府統計への信頼が揺らいだ」75%(「毎日」4日付)、「この問題で政府の対応は不十分だ」83・1%、(「東京」同日付)、「政府の発表する統計を信用できない」79%(「日経」1月28日付)―。

 毎月勤労統計の不正発覚後にマスメディアが行った世論調査は、政府統計そのものに対し、大多数の国民が不信と疑念を抱いていることを浮き彫りにしました。国民だけではありません。日本経済学会は、同問題についての声明で、「日本の統計を通した実証研究の国際的な信頼性も大きく揺らいでいます」(1月29日)と訴え、このままでは「負の影響は計り知れません」と強く警告します。

 なぜ、どんな理由で異常事態が引き起こされ、長年続けられてきたのか―。徹底解明は、政府予算を審議する上での大前提です。

 とりわけ究明が急がれるのは、2004年から続いていた統計不正が、18年1月からは、ひそかに「データ修正」が行われ、組織的隠ぺいがはかられた問題についてです。厚労省が設置した特別監察委員会の報告書では、「組織的隠ぺい」を否定するばかりで動機や背景には迫っていません。突っ込んだ解明と責任の明確化をしなくては、再発防止にはなりません。

 さらに18年1月からは調査対象事業所の入れ替えなどにより、それまで低く出ていた給与総額との比較で「上ぶれ」する結果となったことが大問題になっています。実際、統計偽装の発覚後に再集計した「修正値」では、実質賃金の伸び率は軒並み下方修正されました。安倍政権が盛んに自慢する“賃上げ”は、かさ上げされた数字が根拠だったことを示しています。しかも調査対象の事業所を入れ替えずに計算した場合の実質賃金の伸び率の「参考値」は、野党側の試算でマイナスとなっています。しかし、安倍政権は「参考値」の公表に否定的な態度をとっています。あまりに無責任です。都合の悪い事実を明かそうとしないという隠ぺい姿勢は、国民の不信を増幅させることにしかなりません。

洗いざらい明らかに

 統計不正の経過を知る立場の大西康之・前政策統括官らの国会招致は解明への一歩です。与党は、野党が求める他の関係者の招致に応じるべきです。国会に出席しながら、統計不正については答弁できないとする樋口美雄・特別監察委員会委員長の招致のやり方は即刻改めることが必要です。

 安倍首相や根本匠厚労相らの答弁には深刻な事態が引き起こされたことへの真摯(しんし)な反省がありません。政治の責任は絶対にあいまいにできません。18年1月当時の加藤勝信前厚労相(自民党総務会長)の招致なども含め、洗いざらい明らかにすることが重要です。


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