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2019年1月21日(月)

主張

原発輸出の総破綻

国内外で推進路線を断念せよ

 日立製作所が、英国での原発建設計画の凍結を正式決定しました。安倍晋三政権が「成長戦略」の目玉として進めてきた「原発輸出」計画は次々と破綻しており、今回の日立の決定によって、輸出案件は事実上ゼロになります。原発輸出を日本経済の成長の柱にすえようとしたこと自体が世界の流れに逆らっていることをまざまざと示しています。それにもかかわらず、安倍政権はあくまで原発の輸出に固執し、国内では再稼働させる立場を改めようとしていません。あまりに無反省で無責任です。

事業として成り立たぬ

 原発輸出計画は、安倍政権の「インフラシステム輸出戦略」でも中心に位置づけられ、なかでも英国への輸出は首相をはじめ官民一体で力を入れてきたものです。

 事業費が想定の1・5倍の3兆円規模に膨らみ、計画が難航しても、英国政府から2兆円もの融資を受け、残りの資金は日立、日本企業、英国政府・企業が分担して出資するという枠組みまでつくって実現しようとしました。しかし、最後は「民間企業としての経済合理性の観点」(日立の発表文)から、凍結に追い込まれました。

 太陽光や風力などの普及が進み、発電コストが下落している一方、安全対策強化が求められる原発のコストは年々上昇しています。事業として成り立たないことは、もはや動かせません。

 英国の計画が失敗しても世耕弘成経済産業相は、原発輸出戦略に「変更はない」と言い張っています。そのうえ、「(東京電力の)福島第1原発事故を経験した日本の安全に関する技術が世界に貢献していく可能性はある」とまで述べました。原発事故から8年近くなるのに、福島では県内外で4万人以上がいまも避難生活を続け、事故の収束の見通しもたたない現実から何も学んでいない居直り発言です。世界の流れが理解できない安倍政権の姿勢が問われます。

 原発輸出が破綻する中で、年頭の記者会見で“国民が反対するものはつくれない”と述べていた経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)が、国内での「(原発)再稼働はどんどんやるべきだ」(15日)と発言したことは見逃せません。同氏は昨年末に「原発のリプレース(建て替え)・新増設が必須」だとも語っています。極めて重大です。国内外での行き詰まりを認め、政策転換をはかるべきです。

 福島原発事故後に、原発の「安全対策費」が増え続けて、高コスト電源であることは国内でも一層明らかです。

 だいたいどの世論調査でも、原発運転再開反対・原発ゼロが多数派です。国民の声を受け止めるというならば再稼働は中止すべきであり、新増設など論外です。

 原発固執は再生可能エネルギー普及にとって重大な障害です。それは、九州電力が、原発稼働を優先し太陽光発電の受電の中断をくりかえしていることにも示されています。

未来の希望開く転換を

 国民、市民の長年の運動をふまえて、「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」(原発ゼロ基本法案)が昨年、野党共同で国会に提出されました。法案前文で原発ゼロに向かうことは「未来への希望である」と宣言しています。世界の流れとも一致する法案を実現しましょう。


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