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2018年12月25日(火)

きょうの潮流

 その音色は悲しみとともに、命の大切さを奏でていました。20年前、いじめによって自死した小森香澄さん。愛用していたトロンボーンが一昨日、岡山市内の演奏会でよみがえりました▼高校に入ってすぐ吹奏楽部に入部した香澄さん。しかし希望に満ちた姿は暗転。ことばの暴力によって追いつめられ、3カ月半後に命を絶ちました。やわらかな心を深く傷つけられて▼〈窓の外には夢がある/夢のとなりには自然がある(中略)未来の向こうには愛がある/愛の中には心がある〉。死後に見つかった「窓の外には」と題する香澄さんの詩です。それを基にした楽曲を手掛けている高校の吹奏楽部に両親は娘の愛器を託しました▼確かに娘の存在を感じたと涙をぬぐいながら聴いていた母の美登里さん。つらく悲しい現実をつくったのはおとなの責任だと、夫や仲間たちと一緒にNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」を立ち上げ、いじめのない社会をめざして息長くとりくんでいます▼いまだに実態を隠し、危機感が希薄な学校現場も。美登里さんは各地の小中学校を回り、いじめのない教室をつくろうと訴えてきました。命を守ることを周りが共有する、加害者の気持ちを受けとめる、その大事さを本紙でも説いています▼自分中心で不寛容が広がる社会の中で、今も苦しみもがく子どもたち。死の直前、香澄さんはこんなことばを残しました。「優しい心が一番大切だよ。その心をもっていない、あの子たちのほうがかわいそうなんだ」


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