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2018年12月13日(木)

F16出火 ずさん整備

三沢配備 米軍報告書で判明

青森・タンク投下

 今年2月、三沢基地(青森県三沢市)配備の米空軍F16CM戦闘機が、離陸直後にエンジンから出火し外部燃料タンク2個を基地北西の小川原湖に投下した事故は、漁業者が休業を強いられるなど住民生活に大きな影響を与えました。一歩間違えば墜落による大惨事になりかねない事故は、旧式の部品をエンジンに取り付けたずさんな部品管理と整備で起きていたことが、米太平洋空軍が公表した調査報告書から浮き彫りになりました。(佐藤つよし)


 報告書(11月19日公表)によると、事故機は、2月20日午前8時38分すぎ、エンジンの推進力を増すためのアフターバーナーを使用して離陸した直後にエンジン後方から6~9メートルの炎が発生。滑走路に着陸するため非常時に座席を射出し脱出できる最低高度の地上約600メートルで右旋回を始めますが、速度を維持できず、適切な高度が得られなかったため、外部燃料タンクを緊急投下。午前8時42分に着陸しました。

使用不可の部品

 事故の原因は、エンジンの燃焼室後部のタービンを支えるフレームを覆う「フェアリング」の破損です。タービンは燃焼ガスの圧力で高速で回転し、エンジン前部の空気圧縮機に動力を送ります。フェアリングはエンジン内の高温の燃焼ガスと周囲の冷却気を後方へスムーズに流すための部品です。破損したフェアリングが、冷却気の流れを妨げエンジンが過熱して火災を起こしました。

 事故機のエンジンには、交換対象となっていた旧式のフェアリングが取り付けられていました。

 破損したフェアリングが取り付けられていたジェネラル・エレクトリック社製エンジンは、2000年代半ばに、過度の亀裂や摩滅による損傷、フェアリングの故障が発生していました。

 米空軍は07年8月から10年8月までに問題のフェアリングを交換することを命令。青森で事故を起こした機体も10年6月にいったん、新型部品に交換されていました。

 ところが12年に行ったエンジンの延命整備で、使用不可の旧式部品を新型用の固定部品で装着。装着部分から摩滅による損傷が広がり、フェアリングが破断しました。

究明なしに飛行

 なぜ、使用不可の部品が使われたのか―。

 実は、三沢基地の整備中隊のエンジン整備小隊がエンジンの延命整備の際に、誤って旧式部品を発注したというのです。米空軍の兵たんシステムも、旧式部品を供給網から除外したり、「使用不可」の表示をしたりしていなかったために、部隊に供給され装着されました。

 報告書によると、12年から15年にかけて、エンジン整備小隊では、部品の書類の管理がきちんと行われていませんでした。作業場は棚に部品がなく、過剰な部品や箱が置きっぱなしにされ、使用可能な部品と役にたたない部品が区分けされていないなど乱雑な状態でした。標準的な整備手順も実行されていませんでした。

 今回の事故は、複数のミスやずさんな管理体制が積み重なって発生したというのです。

 米軍は、ずさんな整備という原因を究明しないまま、事故直後にF16の飛行を再開。日本政府も飛行再開を追認し、国民を危険な状況にさらしたのです。

 小川原湖のある東北町の市川俊光日本共産党町議は「小川原湖や私たちの町の上を日々飛んでいる戦闘機がこんなずさんな整備状態だったことに、怒りしかありません。政府は『日本を守る』というが、米軍には、住民を守るためにきちんと整備して飛ばすという姿勢すら感じられません。住民の命を危険にさらして、米軍がやりたい放題に訓練をするのは許せません」と話します。


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