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2018年12月9日(日)

主張

「入管法」成立強行

「使い捨て」を許さぬ声さらに

 安倍晋三政権が今国会の最重要法案と位置付けた「改定出入国管理法」が深夜から未明までの与野党の激しい攻防を経て、参院本会議で可決、成立しました。審議すればするほど、外国人労働者をモノ扱いし、「使い捨て」を拡大する法案の問題が次々と明らかになり、法案を正当化する政府の主張は完全に破綻していました。世論調査でも「成立を急ぐ必要がない」という声が6~8割に達しました。それにもかかわらず、議論を尽くさず、審議を打ち切り、「数の力」を振りかざし成立を強行した安倍政権と自民・公明の与党、日本維新の会などの責任は重大です。

隠ぺいとねつ造に無反省

 改定入管法は、「人手不足」対策として、「特定技能」という資格を新設し、これまでよりもはるかに広い業種で外国人労働者が働くことを可能にするのが狙いです。

 日本で働くことを希望する外国からの人たちや家族をどのように受け入れ、安心して働いて暮らせる共生社会をどうつくっていくかは、日本の国のあり方の基本と将来にかかわる重要な問題です。

 ところが安倍政権が国会に持ち出したものは、全体像はおろか、骨格さえはっきりしない、中身のない欠陥法案でした。法改定の意義も、受け入れる業種や規模も明記されないなど法案としての体をなさず、成立後に政省令で定めるというものです。“枠だけ決めて、後は政府に任せろ”というやり方自体、国会での審議をないがしろにするごう慢極まる態度です。

 だいたい安倍政権には、外国人労働者の人権と尊厳を最優先で保障する姿勢がみられません。

 それは、国際社会からも「人身取引」「強制労働」と厳しい批判にさらされている現行の外国人技能実習制度を温存し、新制度の土台に据えて、さらに活用しようという方針にはっきり示されました。

 実習生の失踪が激増している問題では、最低賃金以下の酷使や、暴行・セクハラなどが横行していた事実を隠ぺいするため調査結果をねつ造し、虚偽答弁を繰り返しました。「失踪」といっても、過酷な仕打ちに耐えかね、身を守るために緊急避難せざるを得なかった人ばかりです。その人たちから聞き取った声をねじ曲げ、あたかも勝手に逃げ出したかのように描いたことはあまりに悪質です。

 成立直前には、昨年までの8年間で技能実習生ら174人が「溺死」「自殺」「凍死」などで死亡していた重大事実も判明しました。深刻な実態をまともに調査・検証せず、可決・成立を押し切ったことは、外国人労働者を「安価な労働力」としかみない安倍政権の立場を一層あらわにしています。

勝手な運用認められない

 暗躍する人材ビジネスやブローカーを排除できない仕組みも浮き彫りです。医療などの社会保障や日本語習得の課題も詰まっていません。留学生の無権利状態も放置のままで、論点は山積みです。外国人技能実習制度は存廃を含め根本からの見直しが必要です。

 安倍政権は来年4月施行に向け、詳細な制度設計をするとしていますが、政権の勝手な判断による方針づくりは許されません。「スタートありき」の姿勢を改めるべきです。外国人労働者の働く権利と人権を守るルールづくり、安心の共生社会実現に向けた世論と運動を広げることが不可欠です。


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