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2018年12月6日(木)

水道法改定案に対する倉林議員の反対討論 参院本会議

 日本共産党の倉林明子議員が5日の参院本会議で行った水道法改定案に対する反対討論(要旨)は以下の通りです。


 水道事業は憲法が保障する生存権を具現化するものとして、「公共の福祉の増進」が目的とされてきました。しかし、過剰な水需要を見込んだダム建設など過大な投資が、事業の経営を大きく圧迫し、必要な老朽管の更新や耐震化も進まない実態が広がっています。本法案はこうした深刻な現状を解決するどころか、清浄、豊富、低廉な水の供給を図り、生活環境の改善に寄与すると定めた水道法1条の目的を損なう危険が極めて高い内容です。

 水道事業で施設の所有権を自治体に残しながらも運営権を民間に移すコンセッション方式を導入するのは水道民営化に他なりません。

 世界では水道民営化の失敗から再公営化の動きが加速しています。ところが、法案提出にあたって厚労省が検証した海外の事例はわずか10件、その内容も10年も前の古い資料の調査結果であることが明らかになりました。

 直近、2000年からの15年間を見ると、水道事業を再公営化した水道事業は、37カ国、235事業にものぼります。調査時点で民営化事業が少なくなかった英国でも、現在では、水道再公営化の方針が国民に支持され、PFI法による新規事業は行わないことを決めています。政府が直近の再公営化の事態をまともに検証していなかったことは明らかです。

 政府は、水道施設の所有は自治体であり、厚生労働相が実施方針や契約を確認するため、監視は可能だと繰り返しました。しかし、海外の事例では、「企業秘密」が情報公開の壁となり、利益や株主配当など経営の詳細を公的機関がつかめなかったことも民営化の破たんの要因となっています。

 コンセッション方式では、民間企業との長期契約を結ぶことになり、契約途中で地方自治体が再び公営に戻す決断をしたとしても、多額の違約金や訴訟リスクが地方自治体に重くのしかかります。実際にベルリン市では、民営化した後、料金値上げという事態に直面し民間企業に料金値上げをやめるよう要請したものの、民間企業が要請に応じなかったため、再公営化を決めました。しかし、契約途中の打ち切りということで、多額の違約金が発生し、再公営化の大きな障害となりました。

 再公営化したパリ市では、利益を施設整備や水道料金の引き下げに還元し、8%もの水道料金引き下げを実現しています。政府はこれらの教訓を学ぶべきです。

 厚労省は、導入の可否は自治体が決めると説明してきましたが、要望書を提出した自治体はわずか1件のみ。厚労省こそが、自治体首長に売り込んでいたのが実態です。

 法案による広域水道の押しつけは、簡易水道など自己水源の廃止につながる危険があり、災害対応にも有効な地域分散型水道の否定にもつながります。

 水道事業者の6割を超える給水人口5万人未満の事業者では、技術職が1人というところも少なくありません。政府が進めてきた行政改革によって、自治体が職員削減に追い込まれた結果です。

 水は人権、自治が基本です。国民の貴重な財産である水道インフラは、市町村主体で健全な運営が可能となる道こそ目指すべきです。現在の水道が抱える問題の解決には、過大な需要を見込んだダム開発は中止し、人員確保、必要な財政支援こそ必要だと申し上げ、反対討論とします。


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