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2018年11月27日(火)

主張

プラごみ削減戦略

規制強化への腰が引けている

 プラスチック廃棄物の海洋汚染などが世界的な問題になる中、環境省の中央環境審議会の小委員会が「プラスチック資源循環戦略」案を今月中旬に了承しました。12月下旬まで意見公募を行ったのち、年明け以降決定する予定です。同案は、2030年までに使い捨てプラスチックの排出を25%抑制することなどを盛り込んでいます。しかし、どんな道筋で実現するかは見えません。プラスチック製品の製造・流通・廃棄の各段階における実効性のある対策が明確でないためです。踏み込んだ方針を打ち出さなければ、国民の納得も世界の信頼も得られません。

世界で生産規制の流れが

 世界全体では年間800万トンを超えるプラスチックごみが陸上から海へ流出していると推計されています。このままでは50年までに世界の海の魚の総重量を上回るプラごみが排出されると警告されています。海に流出し5ミリ以下になったマイクロプラスチックを魚や鳥、動物がのみ込んでいます。人体への影響も危惧されます。

 これに対し世界でさまざまな取り組みが広がり、米国のスターバックス社が20年までに全店舗での使い捨てストロー廃止を発表したことなどが話題を呼びました。

 しかし、日本の対策は立ち遅れています。まず、廃棄プラスチックの回収・再利用が行き詰っています。政府は「有効利用率」は高いといいますが、少なくない量を中国や東南アジア各国に輸出し、処理をゆだねてきました。ところが、これらの国は廃プラ管理を厳しくし、輸入禁止に踏み出しており、安易な輸出に頼ることが困難になってきました。国内処理業者のもとに滞留しています。その場しのぎの対応の深刻な矛盾です。現在の「循環」政策の欠陥を検証し、改めることは急務です。

 国際社会では、使い捨てプラ製品の製造・販売・流通の禁止に踏み込む流れが強まっています。国連環境計画(UNEP)によると世界の60カ国以上の国や地域で、レジ袋や発泡スチロール製食器などの生産を禁止したり、使用時には課金したりする規制が導入されています。レジ袋の生産、消費、販売などを禁止・規制する国も相次いでいます。

 ところが、日本には世界各地で取り組まれている使い捨てプラスチックの生産を禁止するような規制はありません。プラスチック業界の自主努力任せであり、プラそのものの発生削減が不十分です。

 こうした政府の対応の背景には「拡大生産者責任」の政策の遅れがあります。拡大生産者責任とは、使用後の製品回収や再資源化の費用まで製品コストに組み入れ、生産者の責任で負担させる考え方です。欧州でとられているこうした政策に学び、さらにプラごみ削減を進めるために基準年を明確にした数値目標を明記すべきです。

年限区切った削減目標を

 6月にカナダで開かれたG7サミットで、各国の規制強化をすすめる「海洋プラスチック憲章」に日本が米国とともに署名をしなかったことに、失望の声が広がりました。年限を区切った数値目標を嫌がる産業界にばかり気を配る腰の引けた対応を安倍晋三政権が続けていては、国際社会からも国内でも強い批判を受けることは必至です。従来の姿勢を改め、実効性ある「戦略」を作成すべきです。


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