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2018年11月26日(月)

主張

「入管法」国会審議

「酷使する制度」を強行するな

 外国人労働者の受け入れ拡大に向け、新たな在留資格を設けることなどを柱にした出入国管理法改定案の国会審議が緊迫しています。安倍晋三政権は、何が何でも今国会で成立させようと27日にも衆議院通過を強行する構えです。とんでもない話です。審議では外国人労働者の人権を踏みにじる過酷な働かせ方が横行している実態が改めて明らかになり、それを隠ぺいしてきた政府の姿勢が厳しく追及されているさなかです。情報隠しに無反省のまま、一方的に審議を進める政府・与党のやり方に全く道理はありません。徹底審議で廃案にすることこそ必要です。

実態隠しに無反省のまま

 入管法改定案は「特定技能」という資格を新設して、「人手不足」とされる業種や分野の仕事を外国人労働者に担わせようというものです。しかし、具体的な業種名や、受け入れ規模・人数が明記されないなど、そもそも法案として体をなさない“欠陥法”です。

 それに加えて大問題になっているのが、安倍政権の事実隠しの姿勢です。新資格「特定技能」は、現在すでに導入されている「外国人技能実習制度」から多くの人が移ることを前提にしています。法務省は「特定技能」の資格を得る人の5~6割が技能実習生になると見込んでいます。ほとんどが技能実習生になる業種もあります。

 技能実習制度は、日本で習得した技能を持ち帰って、母国で生かすことが建前ですが、外国人を低賃金で長時間働かせる違法・無法がまん延しているのが実態です。あまりにひどい扱いに耐えられないなどとして「失踪」した技能実習生は昨年7089人、今年前半だけでも4279人にのぼっています。外国人労働者を「使い捨て」にしている技能実習制度の実態把握と徹底的な検証は、法案議論の核心中の核心です。

 ところが政府は、「失踪者」約2800人から聞き取りを行いながら、そのデータを開示しようとせず、「概要」としてまとめた資料では、「失踪」したのは技能実習生が勝手に逃げ出したかのようなねつ造を行ったのです。野党の追及でデータ偽装が明らかになってからも、基礎になった「聴取票」のコピーを認めないなど、隠ぺい行為への反省はありません。

 野党議員による「聴取票」の閲覧・書き写しでは、最低賃金以下が相当多数にのぼり、暴力を受けていたり、病院の受診が許されなかったりなどの劣悪な現状が浮き彫りになっています。政府のうその悪質さはいよいよ明白です。

 この実態を放置したまま、新資格「特定技能」を継ぎ足しても、外国人労働者の人権や生活が守られるはずがありません。政府は、データをねじまげ事実を偽ったことを根本から反省し、外国人労働者を酷使する制度を温存・拡大する法案の成立を断念すべきです。

「調整弁」は許されない

 22日の衆院法務委員会の参考人質疑では、実習生の支援に取り組む研究者、弁護士などから、外国人労働者の権利侵害を一層悪化させる法案の危険性を指摘する意見が相次ぎました。人が足りないからと外国人を雇用の「調整弁」にする国では世界の信頼を得られません。外国人をどのように受け入れるかは、日本の労働者の権利と暮らしにも深く関わります。結論ありきの強行は許されません。


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