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2018年11月3日(土)

主張

文化庁発足50年

「稼ぐ文化」への偏重を問う

 きょうは「文化の日」です。今年は1968年の文化庁創設から50年です。文化庁は先月、「新・文化庁」の触れ込みで、2021年度の京都移転を見すえ次長を2人配置し、文化部・文化財部の二部制を廃止するなど「機能強化」の名で組織改編を行いました。何をめざす「強化」かが問われます。

本質的価値を軽視

 「文化芸術は、人々の創造性をはぐくみ、その表現力を高めるとともに、人々の心のつながりや相互に理解し尊重し合う土壌を提供し、多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するものであり、世界の平和に寄与するものである」―。昨年、16年ぶりに改正された文化芸術基本法は、前文でこうのべています。

 この時の改正で、同法の前文に「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し」という文言が加えられたことは重要です。

 もともと同法は、第2条第3項で「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利」と明記しています。

 文化行政は本来、表現の自由、国民の自主性を尊重し、芸術・文化の本質的価値を大事にして、だれもが文化をつくり楽しむ権利を支えることが求められます。

 ところが安倍晋三政権は、こうした立場とは異質の考え方を文化行政に持ち込んでいます。

 昨年6月閣議決定した「骨太の方針2017」は「稼ぐ文化への展開」を呼号し、「文化による国家ブランド戦略の構築と文化産業の経済規模(文化GDP)の拡大に向け取組を推進する」としています。そのための「文化庁の機能強化」だと明言しています。

 同時に決めた「未来投資戦略」も「文化芸術・観光・産業が一体となり新たな価値を創出する『稼ぐ文化』への展開」を唱えています。昨年12月に内閣官房と文化庁がまとめた「文化経済戦略」も「経済活性化の起爆剤としての文化芸術」を一面的に強調しています。

 芸術・文化が産業や観光の発展に寄与すること自体は、否定すべきものではありません。しかし、文化財の活用ばかりを強調して保存を軽視したり、イノベーションの創出や経済規模の拡大に結びつかない芸術・文化を支援しなかったりすれば本末転倒です。

 昨年、山本幸三地方創生担当相(当時)の「一番のがんは学芸員。観光マインドがまったくない」という発言が批判を浴びました。安倍政権の「稼ぐ文化」偏重のゆがみが端的に表れたものです。

 文化庁は今年4月、「稼ぐ文化」の立場から「アート市場の活性化に向けて」という文書を出し、関係者に衝撃を与えています。

 全国388の美術館で構成する全国美術館会議は6月、声明で「美術館が自ら直接的に市場への関与を目的とした活動を行うべきではない」「美術作品を良好な状態で保持、公開し、次世代へと伝えることが美術館に課せられた本来的な役割であり、収集に当たっては投資的な目的とは明確な一線を画さなければならない」とのべました。

権利を支える行政へ

 日本の文化行政はあまりに貧困です。文化庁予算も2018年度で1077億円と少なく、抜本増額が求められます。経済効率優先でなく、国民が文化を創造し、享受する権利を支える方向に文化行政を転換すべきです。


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