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2018年9月29日(土)

ふるさと納税過熱 税理士に白羽の矢

“謝礼付き”紹介依頼

国の地方財源削減が背景

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(写真)ふるさと納税の協力者の紹介を求める市長の名前入りの文書(画像の一部を加工しています)

 ふるさと納税の過熱が問題になっています。自治体への寄付であるこの制度は、第1次安倍晋三政権で総務相だった菅義偉官房長官が発案したとされています。自治体間の競争が過熱した裏には何があるのか―。(仁田桃)

愛知・碧南市

 「本市へのふるさと納税をお知り合いやお客様へお勧めいただけませんか? ご協力をしていただける場合は、税理士の皆様に謝礼として寄附金額の10%をお支払いします」

 9月下旬、そんな文書が東京・中野区の税理士法人に届きました。差出人は愛知県碧南(へきなん)市ふるさと応援寄附金事務局。紹介を「お願い」する文書の裏面は協力申し出書になっており、同税理士法人の住所や電話番号、同市が振り分けたID番号が印刷されていました。謝礼の振込先の口座を書く欄があり、ファクスで送るように促しています。

手数料10%

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(写真)ふるさと納税の返礼品のカタログと寄付協力者の紹介をお願いする文書(画像の一部を加工しています)

 同封されていた「お礼品カタログ」には、ウナギやシラスなどが掲載されています。

 受け取った税理士は「われわれの業務で言うと、土地の売買で発生する仲介手数料だ。それを自治体が寄付金集めでやっていいのか」と首をかしげます。

 同市の担当者によると8月下旬に都内の税理士法人に案内を送付しているといいます。

 税理士を対象にした理由を市の担当者は「ふるさと納税はインターネットで寄付する人がほとんどで、ネットをしない人を掘り起こすため」と説明。謝礼金10%は、「ネットの手続きでかかる手数料と同じだと考えている」といいます。

 同市は、ふるさと納税で約5億5千万円(2017年度)を集めて県内トップクラス。担当者は「税理士の関係団体から『不快』だと抗議が来たので、今後中止するか検討中だ」と明かしました。

 ふるさと納税は08年に国会で成立しました。寄付額は14年度の388億円から16年度は2854億円に急増。寄付を得るために自治体間の“返礼品競争”の過熱化が問題になっています。

 なぜ自治体がふるさと納税集めに走るようになったのか―。そこには、小泉純一郎内閣の「三位一体改革」で、国庫補助負担金の削減や地方交付税、税源移譲を含む国と地方の税源配分が見直され、地方財源を削ってきたことがあります。

目立つ弊害

 住民税などの地方税は、自治体の行政サービスの費用を住民が負担し合う仕組みです。ふるさと納税を利用すると、寄付額の多くが住民税などから控除されます。住んでいる自治体のサービスを受けるのに、そこには住民税を十分に払わないという事態がおきます。

 ふるさと納税を自治体が競い合った結果、都市部では地方に寄付する住民が多く出ました。行政サービスの財源が大幅に減った自治体も出るなど、弊害が目立っています。

 日本共産党は、返礼品競争の過熱防止や、富裕層優遇とならないように仕組みを見直すことなどを求めています。


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