2018年9月29日(土)
『新潮45』休刊の一方で 自民、杉田議員の人権侵害を放置
公認した安倍首相の責任重大
LGBT(性的少数者)には「『生産性』がない」などという杉田水脈衆院議員の重大な人権侵害の一文を掲載した『新潮45』が休刊に追い込まれました。最新号にも杉田氏を擁護する論客の「反論」を掲載した揚げ句の事実上の廃刊です。
しかし、杉田氏が所属する自民党は同氏に何の処分も与えず、同党本部前での5000人規模の抗議やメディアの批判が強まった後の8月3日、公式ウェブサイトにようやく掲載した見解で、杉田氏の「個人的な意見」だと擁護。「理解不足と関係者への配慮を欠いた表現がある」「十分に注意するよう指導した」と説明しただけ。杉田氏も「真摯(しんし)に受け止め、今後、研さんに努めてまいりたい」とコメントしながら、謝罪や撤回もせず、記者会見にも応じていません。
二階俊博幹事長は記者会見(7月24日)で「人それぞれ政治的立場はもとより、いろんな人生観もあり」と容認。安倍晋三首相は総裁選中のTBS番組(9月17日)で「まだ若いですから、しっかり注意しながら仕事してほしい」と不問に付しました。しかし問題は、杉田氏を2017年総選挙で公認した同党と党総裁の安倍首相の責任に直結します。
みんなの党や日本維新の会などを渡り歩き、14年総選挙で次世代の党公認で出馬し落選した杉田氏に注目したのは安倍首相でした。杉田氏は17年9月29日、ツイッターで「自民党からの(総選挙)出馬が決定いたしました。最後に背中を押していただいたのは桜井よしこ先生です」と明かしました。桜井氏は、その経緯を同日のネット番組でこう紹介しています―。
「杉田水脈さんが希望の党から猛烈なアタックを受けても『いやです』って断ったんです。そしてなんと、自民党から出馬することになりました」「安倍さんが『杉田さんはすばらしい』というので、萩生田(光一幹事長代行)さんが一生懸命お誘いして…」
他党の落選候補をわざわざ“一本釣り”した狙いは何か。日本軍「慰安婦」や南京大虐殺の史実を否定し続けてきた杉田氏は、次世代の党所属当時の14年10月31日の衆院本会議で、安倍首相の「ジェンダーフリー」は「結婚や家族の価値を認めない」「文化の破壊につながる」との主張を持ち上げつつ、男女平等は「反道徳の妄想」だとの主張を展開しました。安倍氏はそんな右翼的傾向を買ってスカウトしたのです。
杉田氏は当選後、神道政治連盟国会議員懇談会と日本会議国会議員懇談会に加盟。いずれも改憲右翼団体と連携し、安倍首相が会長や特別顧問など要職を務めてきた議連です。
杉田氏のLGBT攻撃は「ナチスの優生思想にもつながりかねない」(「毎日」7月25日付社説)とまで批判されましたが、同氏はツイッターで、「大臣クラス」を含む党内の先輩から「間違ったこと言っていないんだから、胸張っていればいいよ」などの声をかけられたとして、「自民党に入って良かったなぁ」と感激を示していました(7月22日付投稿。すでに削除)。靖国派が幅を利かす安倍政権と同党こそ杉田氏の異常な主張を鼓舞する本丸なのです。
LGBTの人たちの人権を侵害し、創刊33年の月刊誌の事実上の廃刊の原因となった杉田氏の問題を放置する自民党と安倍首相の責任が厳しく問われています。