しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2018年8月15日(水)

きょうの潮流

 次の世代にどう戦争体験を伝えるか、そのために、何よりも「届く言葉で書く」ことを意識した。日本の近現代史を研究する吉田裕さんが『中央公論』9月号の対談で語っています▼昨年末に出した自著『日本軍兵士』が14万部を重ね、今も売れ続けています。「議論の土台になるものを書きたかった」という本は、ぼう大な資料をもとに兵士の目線から戦場の実態に迫りました▼たとえば歯の話。「行軍中、歯磨きと洗顔は一度もしたことはなかった」。元兵士の証言通り戦地では虫歯がまん延し、体力を奪っていきました。水にぬれたまま軍靴を履き続け、多くが凍傷や水虫に悩まされたとも▼身体のことに注目したのは身近で自分の問題に置き換えやすいと思ったからと吉田さん。いかに心身がむしばまれ、彼らが無残に死んでいったか。負け戦ばかりで戦死者が激増し始めると、生きていることさえ白い目でみられたといいます▼自活自戦、永久抗戦。数々の絶望の戦場で6割が飢え死に、戦争終結までの1年間で全戦没者のおよそ9割が亡くなりました。こうした事実が知られる一方で、史実を歪曲(わいきょく)した本も書店には並び、その数は増えているようにも▼きょう73回目の終戦記念日を、私たちは若者をふたたび戦地に向かわせる政権のもとで迎えます。安倍首相は次の国会に9条改憲案を提出し、自衛隊を明記すると強調しました。歴史の歯車が平和へと動き始めた、あの夏。それを逆に戻そうとする勢力との負けられないせめぎ合いです。


pageup