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2018年8月14日(火)

きょうの潮流

 高畑勲監督「火垂(ほた)るの墓」は、主人公・清太の命が尽きる場面から始まります。終戦直後の薄暗い駅の構内。意識がもうろうとするなか、栄養失調で先立った妹・節子の名をつぶやきます▼自身も衰弱し、ぼろぼろになって柱にもたれかかる清太。それを汚らわしいものでも見るかのように避けていく通行人、棒でつついて生死を確かめる駅員。そこには同じ境遇に置かれた子どもたちの姿が何人も描かれていました▼映画の原作小説を書いた野坂昭如さんは焼け跡世代。当時は空襲や原爆によって親や家を失った孤児が駅や街にあふれ、飢えや病気などで死と隣り合わせの生活を送っていたと語っていました▼NHKが放送した「“駅の子”の闘い」はその実態を追いました。12万人をこえる戦争孤児。敗戦の混乱のなかで多くは国から見捨てられます。劣悪な環境のもとで物ごいや盗みで生きのびる日々。やがて世の中が復興へと歩み始めると、社会の治安を乱す浮浪児として野良犬のように扱われます▼つらい思いをした体験者が番組で重い口を開いていました。食べるものも着るものも寒さをしのぐ場所もなかった。でも、ほんとうに欲しかったのは人のぬくもりだったと▼闇に消えていった数知れない子どもたちの戦後史。国を破滅に導いた罪はここにも。戦争したのはおとなの責任。なぜ、自分たちがこんなにも苦しめられるのか。もう戦争はしてはならない―。たくさんの清太の心の叫び。それは今を生きる私たちに訴えかけています。


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