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2018年7月29日(日)

資本主義の病巣 君臨するアマゾン(1)

「やはり死者が出たか」

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 ひそかに「アウシュビッツ」とも呼ばれる施設が神奈川県小田原市にあります。インターネット通販大手の米国企業アマゾンが2013年9月に開設した小田原物流センター(FC)です。過酷な労働の果てに体を壊す人が続出しています。

 小田急線足柄(あしがら)駅で電車を降り、渡線橋を上って窓をのぞくと、住宅街のただ中に小田原FCの巨大な建物が陣取っているのが見えます。5階建てで延べ床面積は約20万平方メートル(当初)。東京ドーム4個分を超す広さです。

最大の物流拠点

 小田原FCはアマゾンが日本に設けた9カ所目の物流センターでした。「効率化」のため「狭山(さやま)FC(埼玉県)、芳野台(よしのだい)FC(埼玉県)、常滑(とこなめ)FC(愛知県)の在庫をすべて小田原FCに統合」(アマゾン・ホームページ)。書籍、CD、家電、キッチン用品など多彩な商品を扱う、アマゾンにとって日本最大の物流拠点となりました。

 40代の大川あきらさん(仮名)はつい数カ月前まで小田原FCで働いていました。商品を詰めた重い段ボール箱を運んで途方もない長距離を歩く仕事でした。年中蒸し暑い広大な施設の中で大量の汗を流しました。

 「熱中症で倒れる人、疲労骨折する人、腰を痛める人が絶えませんでした。知り合いが次々に体を壊して辞めました。私も手の指を痛めてうまく曲がらなくなりました」

健康でも体壊す

 施設内では開設後3年弱の間に3人の労働者が急死しました。

 本紙の取材に対し、日本法人アマゾンジャパンは3人の死亡を認めつつ、業務起因性はないと主張。労働基準監督署に報告したものの是正要請はなく、遺族からの労災申請もなかったと説明します。死因は個人情報だとして伏せました。しかし、施設内で熱中症や疲労骨折などの被害が出ていることは否定しませんでした。

 最初に亡くなったのは20代の男性でした。労働者の間に動揺が走ったと大川さんは振り返ります。

 「会社側は何も説明しない。『やっぱり死者が出たか』『人ごとではない』という話が広がりました。それほど仕事がきつく、健康な人でも体を壊すことがあったからです」

 アマゾンはインターネットを駆使した利便性と低価格を武器に、破竹の勢いで売上高を伸ばし、急成長した巨大IT(情報技術)企業です。創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏は18年版フォーブス世界長者番付で世界一の大富豪となりました。保有資産は1120億ドル(約11兆9千億円)に達しました。栄華の足元で、押しつぶされる現場を探ります。

 (つづく)

 「資本主義の病巣」をシリーズで追います。「君臨するアマゾン」は11回連載の予定です。


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