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2018年5月24日(木)

近畿財務局「森友」交渉記録

昭恵氏の名 出るごとに

昭恵氏付職員「優遇を受けられないかと総理夫人に照会があり、当方からお問い合わせ」

 財務省が23日に公表した学校法人「森友学園」(大阪市)との国有地取引にかかわる文書には、安倍晋三首相の妻、昭恵氏の名前が頻繁に出てきました。約8億円もの値引きの背景に、学園と安倍首相夫妻の関係があったことが、くっきりと浮かび上がってきました。(原千拓、前田美咲、和田肇)


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(写真)財務省が提出した文書

打ち切り検討一変

 最初に安倍首相夫妻が登場するのは、2014年5月。財務省近畿財務局が計4回、財務省本省に相談した「本省相談メモ」のなかです。当時、学園の資金難などのため、財務局に貸付の審査期間を延ばす要請をしていました。

 メモには、同年4月28日に当時学園理事長だった籠池泰典被告=詐欺罪で起訴=が、昭恵氏から「いい土地ですから、前に進めてください」と言われたことが記されていました。また籠池被告が改憲右翼団体「日本会議大阪代表・運営委員」で、安倍首相も日本会議国会議員懇談会副会長であることがかかれていました。

 財務局は当初、「いたずらに審査期間を延長することは望ましくない」と打ち切りを検討していました。ところが、本省とのやり取りをへて「延長もやむを得ない」と突然、態度を変更します。

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(写真)財務省が提出した文書をもとに聞き取りを行う野党議員=23日、国会内

 15年1月9日、財務局は学園を訪問。財務局は冒頭、昭恵氏が学園を訪問し「教育方針に感涙した」という産経新聞のネット版記事が掲載されたことについて、「記事を拝見したが、取材の時期はいつごろか」と質問しています。財務局が昭恵氏の動向を気にかけていた様子が分かります。

 このとき財務局は学園に、年間貸付料の概算を「利回り4%程度で考えれば3000万円台半ば(3400万円)程度となる」と伝達。財務省は学園との事前の価格交渉を否定し続けていますが、学園に便宜を図った疑いが濃厚に示されています。

「夫人」指示で照会

 15年7月31日に財務局が学園を訪問した際には、籠池被告が、翌年4月の開校に向けて準備が進んでいないと批判。妻で副園長だった諄子被告=詐欺罪で起訴=が「瑞穂の国記念小学校開設に関しては、阿部首相、阿部首相夫人、自民党幹部も認識している(何かあればいつでも相談できる)」(いずれも原文のママ)と自慢します。

 同年8月5日に財務局が学園を訪れた際も、諄子被告が「9月5日の入学予定者家族説明会には安倍昭恵夫人も来ていただくこととなっている。首相にもお願いしている」と言及。昭恵氏はこの9月5日に学園で講演し、小学校の名誉校長を引き受けました。

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(写真)安倍首相の妻、昭恵氏付の政府職員からの問い合わせを記録した森友交渉記録

 それでも安倍首相夫妻と学園の関係が分かるにつれ、財務局、財務省は学園の小学校建設に協力したのです。

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(写真)森友学園との交渉記録では、昭恵氏が小学校の棟上げ式に来る予定とくりかえし籠池被告が近畿財務局に伝えていました

 決定的なのは、昭恵氏付職員の谷査恵子氏が本省国有財産業務課に電話した同年11月10日。谷氏は「(昭恵氏の)知り合いの方から、社会福祉法人同様、優遇を受けられないかと総理夫人に照会があり、当方からお問い合わせさせていただいたもの」と説明。問い合わせが昭恵氏の指示だと明らかにしています。籠池被告は国会の証人喚問で、昭恵氏の携帯の留守番電話に依頼を録音したと証言していました。谷氏の独断で問い合わせたとする政府の説明を覆す内容です。

 この日は担当者不在だったため、谷氏は2日後に改めて本省の田村嘉啓国有財産審理室長と電話で相談。交渉記録には「(谷氏の照会の)背景として、安倍総理夫人が名誉顧問に就任した開校予定の小学校(国有地を学校法人森友学園に対して売払い前提で貸付け中)から問い合わせがあった」と明記しています。昭恵氏と関係がある学園からの問い合わせだと明確に理解をして応対をしていました。

値引きひねり出す

 この後も、籠池被告は小学校建設の遅れについて、昭恵氏の名前をかざして対応を迫ります。

 16年3月14日、ごみが大量に出たとして、籠池被告が財務局を学校建設用地に呼びつけました。籠池被告は「6月には棟上げ式を行う予定であり、内閣総理大臣夫人も来ることとなっている」と強調。翌15日に財務局を訪れた籠池被告が「6月には棟上げ式も予定されており、安倍総理夫人も出席されることで調整しているところであり、重大な問題として考えている」と念を押しました。

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(写真)2014年3月に対面した際に撮られた昭恵氏と籠池被告の写真(昭恵氏のフェイスブックから)

 同月30日にも籠池被告は「6月の棟上げ式には首相夫人を招待するスケジュールを組んでいる。やらざるを得ない。これができなければ、私は切腹する覚悟」と時代がかった物言いで対応を求めました。

 実は大阪府は当初、小学校建設に疑問を示していました。14年3月4日の記録には大阪府が財務局に対して、「小学校名『安倍晋三記念小学校』として本当に進捗(しんちょく)できるのか、取扱いに苦慮している」と吐露しています。

 交渉記録では、16年4月5日には、学園側の業者が、ごみが含まれているのを確認できているのは「深さ3メートル程度の層」と明言。ごみがどこまであるか分かっていないのに、相談のうえ深さ「9メートルまでの範囲では出てきている旨を資料に付記したい」(学園側の弁護士)と“口裏合わせ”をしました。

 こうして最後には、約8億円値引きをひねり出したのです。


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