しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年5月16日(水)

きょうの潮流

 「散切(ざんぎ)り頭をたたいてみれば、文明開化の音がする」。明治初期のはやり歌に由来する言葉は、当時を象徴する文句として知られています▼散切り頭とは、ちょんまげを切り落とした髪形。因習にこだわる人をちょんまげ頭、近代化の波にのった先進的な人を散切り頭に例えました。これまで閉ざしてきた国に西洋の文化がなだれ込み、世相や風俗も大きく変わっていった時代でした▼いち早く時流をつかんで金もうけした人たちが大手を振りはじめた頃、好評を得た歌舞伎が黙阿弥作「人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)」でした。散切物と呼ばれるこの演目を明治150年の今年、前進座がよみがえらせ、いま国立劇場で上演しています▼舞台は開港の横浜。金の亡者と義理人情に厚い人たちが絡み合う喜劇です。「地獄の沙汰も金次第」「世界は開化に進むほど人が薄情になるという」。当時の世相を反映した劇中のセリフが今の世にもしみじみと▼強欲な商人を演じた藤川矢之輔さんは明治維新を考える一つのきっかけになればと本紙で語っています。「どうやって庶民のなかに新しい形の格差がひろがり、戦争の道を歩むようになるのか。庶民が体制側の流れに乗っていくだけではいずれそうなってしまう」▼文明開化は国の体制や生活を変えただけではありません。自由や平等、権利という意識を国民にもたらしました。150年の歴史をたどるとき。お金に翻弄(ほんろう)されず、圧政にも屈せず、人間として大切なものを求めてたたかってきた人びとの歩みにこそ。


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