しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年5月10日(木)

きょうの潮流

 柔らかな日が差し込む部屋。5、6人が手や指、表情を交えながら会話をしています。言葉は聞こえません。全員が笑っているのに、何を話しているのか分からないのは私一人…▼何だか息苦しくなりました。コミュニケーションが取れず孤立することがどんなに苦しいことか。地域や職場、学校などでろう者が日々、直面しているつらさを実感しました▼「手話サークルができて、おしゃべりできるのが楽しい」。神戸市に住む77歳のろうの女性が話してくれました。聞こえる人と交流できるようになり、今では多くの情報を得られるようになったと喜びを▼約50年前に、ろうの男性と結婚しました。「子どもを産まないこと」が条件でした。「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」とした旧優生保護法下でのこと。夫となった男性は、母親に連れられて病院へ。ズボンを下げられ、これから何が起こるのか悟りました。“産んではいけない”とは言われていたけど、何を意味するのか理解できませんでした▼区役所に1人しか手話通訳者がいない時代。断種の手術を受けた後も適切な情報を得ることはできず、男性は機能を再生できると思っていました。情報が不十分な部分は想像で補っていたのです▼手話を固有の言語・文化だとする自治体が全国に広がりつつあります。22道府県1区136市19町、計178自治体が手話言語条例を制定。聞こえる、聞こえないで優劣をつけるのではなく、互いを尊重し情報が保障される社会をめざして。


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