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日本共産党

2018年4月12日(木)

きょうの潮流

 通勤電車のなかで、女性のバッグに下がるカード。そこには「アベ政治を許さない」の文字。あの俳人・金子兜太(とうた)さんの墨書です▼2月に98歳で亡くなりましたが、遺作9句が自身の主宰した俳誌『海程』の4月号に掲載されました。〈陽の柔(や)わら歩ききれない遠い家〉〈雪晴れに一切が沈黙す〉〈河より掛け声さすらいの終(おわ)るその日〉―。最期まで衰えなかった創作意欲が伝わります▼戦後の社会派俳句、前衛俳句の旗手として大きな影響を与えてきました。豪放磊落(らいらく)でありながら、相手を圧する威圧感は皆無だったといわれます。「彎曲(わんきょく)し火傷し爆心地のマラソン」。転勤先の長崎で詠んだ代表句は、戦争と原爆に真正面から向き合ったものです▼「無謀な戦争の体験者として、無残に死んでいった人たちに代わって伝えたい。戦後、恥ずかしくないよう発言しなければならないという思い、それが私の俳句精神です」。本紙のインタビューではそう語っていました▼生涯をかけて平和を求めた俳人亡きあと、さまざまな思いをつづった句や歌が本紙に寄せられています。〈前衛の旗頭逝く山に野火〉〈兜太の句連ね連凧(れんだこ)天高く〉〈春風や生きているなる兜太の書〉〈土筆(つくし)いづ逝きし兜太の足跡に〉▼青春を奪われ、多くの仲間を失った戦地に、ふたたび若者たちを赴かせようとする「アベ政治を許さない」。生の人間が、生の言葉を率直に語ることの大切さ。その揺るがない決意と覚悟は受け継ぎ、たたかう人びとの心に。この政権を倒すまで。


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