しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年4月10日(火)

きょうの潮流

 ライオンとにらめっこ、真冬の寒中水泳や滝行、夜中にたたき起こされて腕立てや腹筋―。かつて日本のレスリング界では奇抜な「精神修業」が取り入れられていました▼戦後、世界のトップに押し上げた指導者、八田一朗。彼の精神論は受け継がれ、自衛隊空挺団の降下訓練をやらせたり、“虎の穴”と名付けた合宿所で選手を練習漬けにしたり。福田富昭レスリング協会会長も「八田イズムは末代まで伝えなければならない偉大な遺産である」▼選手の人権を無視してきた指導は、今度のパワハラにもかかわっています。コーチが気に入らない選手に嫌がらせを働く。福田会長も古くからあったパワハラ体質がこういう問題を引き起こしたと認めています▼暴力が後を絶たない大相撲では土俵上で倒れた人を助ける女性に「下りろ」と。「不浄」なものとして女性を土俵に上がらせない。神事をかざした伝統は大相撲をスポーツとして発展させてきた協会の歩みからもかけ離れています▼「原爆落ちろ、カープ」。プロ野球では、ひどいやじが問題に。広島の本拠地球場の外野席で中日ファンが飛ばしました。もともと外野席は無法地帯といわれて選手の人格までおとしめる暴言が飛び交ってきましたが、今回の悪質さは極まります▼今も日本のスポーツ界に根強く残る悪(あ)しき慣習。当事者が向き合わず黙してきたところに不祥事を生む土壌があるのでしょう。そこから脱皮していくことがスポーツ団体や組織のあるべき姿にもつながるはずです。


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