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2018年3月22日(木)

米F16燃料タンク事故1カ月

緊急手順“爆弾”投棄も マニュアルに明記

人口密集地避ける規定なし

写真

(写真)三沢基地の米空軍第35戦闘航空団所属のF16C戦闘機。主翼下に複数の外部燃料タンクを装備しています

 米空軍のF16戦闘機が青森県東北町の小川原湖(おがわらこ)に燃料タンクを投棄(2月20日)した事故から1カ月がたちました。本紙の調べでF16は、エンジン火災が発生した場合に必要ならタンクや爆弾などの兵装を投棄する手順になっていることが21日、わかりました。F16の飛行マニュアルで判明したもの。今回の事故は、シジミ漁の中止や周辺住民の不安など影響を広げていますが、マニュアルには、投棄の際に人口密集地などを避けて投棄する規定はありませんでした。

警告灯への対処

 F16を製造した米ロッキード・マーチン社の飛行マニュアル第3章「緊急時の手順」(2003年6月15日改訂)で判明したもの。これによると、「エンジン火災」の警告灯が点灯した場合の対処として、(1)離陸中で条件が許せば、離陸を中止(2)離陸を継続する場合は、最低でもパイロットが脱出するための座席の射出に適した高度に到達するまで離陸時の推力(エンジン燃焼室で燃料を爆発させて得られる推進力)を維持(3)必要なら、兵装を投棄(4)火災が継続している場合は、座席を射出(5)火災表示が消えた場合は、可能な限りすみやかに着陸―などとしています。

 マニュアルの内容からは、今回の事故への対処が、手順通りに実施されたことがわかります。同マニュアルでは、火災の状況の目視や計器による確認など、基地に「着陸」するか座席を「射出」するかの状況分析・決断については明記されています。他方、兵装を投棄する場所について人家や住民の存在を確認する規定はありません。

国民の頭上危険

 タンクや爆弾など兵装の投棄は、エンジン火災で推力が減少した場合でも、重量を軽くして座席を射出しパイロットが脱出できる高度まで上昇するために実施します。今回も事故機が爆弾を搭載していれば、爆弾が投棄される事態もあり得たことになります。

 事故機は基地離陸直後の2月20日午前8時40分ごろ、エンジン火災が発生。米軍は「火災のため必要となり、パイロットが小川原湖付近の人けのない場所に、2個の外部燃料タンクを投棄した」と説明。実際には投棄場所の付近で複数の漁船が操業していました。

 事故機はその後、三沢基地に戻り、パイロット、地上要員に死傷者はなかったとしています。エンジン火災が消火できなければ、パイロットだけが脱出し、無人の戦闘機が墜落するという重大事故になりかねない状況でした。

 1977年9月に横浜市緑区(現青葉区)の住宅地に米海軍RF4ファントムが墜落し、3歳と1歳の兄弟が亡くなりました。厚木基地離陸後にエンジン火災が発生し、パイロット2人が脱出。制御を失った戦闘機が墜落した事故でした。

 青森でのF16の事故は、横浜の事故から40年を過ぎた今も、米軍機による同様の事故の危険が日本国民の頭上を覆っていることを見せつけました。(佐藤つよし)


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