しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年3月18日(日)

きょうの潮流

 愛する人を突然失った深い悲しみ。主人公は男性の体で生まれながら女性として生きるトランスジェンダー。失意の彼女は容赦のない偏見や差別にさらされます▼今年のアカデミー賞で外国語映画賞に輝いた「ナチュラルウーマン」です。恋人の葬儀にも参列させてもらえず、周りからは「怪物のよう」にみられる。嵐にあらがいながら歩く場面は「私らしく、私を生きる」というテーマを象徴していました▼主演のダニエラ・ヴェガさんも男性から女性に変わり、歌手として女優として活躍しています。「私にとって大事なのは、人生を尊厳をもって生きるということ。どうすればそれができるか、その発見が私自身の移行」。本紙文化欄のインタビューで答えています▼90周年を迎えたアカデミー賞は、作品賞に「シェイプ・オブ・ウォーター」を選びました。声をなくした女性が不思議な生きものと心を通わせていくファンタジー。物語の根底に流れるのは、異質なものを排除せず、受け入れる姿です▼メキシコ生まれのギレルモ・デル・トロ監督はみずからを「移民」といいます。さまざまな国で暮らしてきた自分がいいたいのは、映画のすばらしさとは言葉や国境をこえられることだと▼節目の授賞式。受賞者や贈呈者が呼びかけたのは、セクハラ問題をはじめ、性や人種、民族への偏見や差別に立ち向かうことでした。だれもが自分らしく生きられる多様な社会をつくる。それは、因習や呪縛から解き放され、人間の本質に迫ることです。


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