しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年2月18日(日)

きょうの潮流

 新緑のまぶしい春の仙台でのことでした。透き通る眼差(まなざ)しの17歳の高校生が、ときに熱っぽく、ときに笑みをたたえつつ、話をしてくれたことを思い出します▼五輪2連覇の偉業を成し遂げたフィギュアスケートの羽生結弦選手。6年前にインタビューする機会がありました。東日本大震災での経験を「今後の自分の基盤になる」と▼震災当時、自宅もリンクも被災し避難所生活。何も考えられない日々が10日ほど続き、「このまま滑れなくなるかも」との思いがよぎったとか。まもなく知人から声がかかり横浜のリンクへ。でも「自分だけが練習していいのか」。避難所の人たち、仲間の選手への申し訳なさから心は揺れました▼霧が晴れたのは、震災から1カ月後のチャリティー演技会でのこと。予想を超える励ましに、「スケートをやっていてよかったと心から。みんなに支えられ、応援されて自分がいることがわかった」▼今回、羽生選手は2カ月余もリンクに立てない大けがに見舞われました。それをぎりぎりで乗り越えての金メダル。強さの陰には「支えられて自分がある」という、あのときの思いがあるように思えてなりません▼フィギュアスケートは「自分を人として成長させてくれるもの」といい、「スケートと人間性ってつながっている。力がつけば人間的にも高まっていく」。高校生らしからぬ核心を射抜く言葉にも驚かされました。平昌での研ぎ澄まされた演技。技と心を支え、積み重ねてきたものが少し見えた気がしました。


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