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2015年12月31日(木)

主張

TPP協定試算

政府の宣伝は度が過ぎないか

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 いよいよ今年も最後になりました。新しい政治の胎動を予感させる希望に満ちた年越しですが、同時に不安もあります。年明けに予想される戦争法の施行、消費税増税など経済への不安、原発の再稼働や年明けに本格化する環太平洋連携協定(TPP)の署名や批准の動き…。そんな中、年末に更新されたばかりの政府のTPP対策本部のホームページを見て驚きました。TPP協定の発効で、国内総生産(GDP)は約14兆円拡大する、労働供給は約80万人増える―。これまで見たこともないような数字を並べ立てています。政府の宣伝は度が過ぎないか。

全体像も明らかにせず

 「TPPのメリット」「農林水産分野などの分野別ファクトシート」「TPP協定の経済効果分析」「関税についての試算」。政府対策本部のホームページに一夜にして載せられた膨大な資料は、それだけで圧倒されるものがあります。中身の前にまず分量に圧倒されます。

 日本やアメリカなど12カ国が参加し、原則関税ゼロなどを盛り込むTPP協定は、「大筋合意」したもののまだ協定文もできておらず、政府のホームページでも日本語で公開されているのは暫定案の概要だけです。国民のなかにはどんな影響が出るのか不安が渦巻いているのに、協定の全体像も公開せず、影響はたいしたことはないといった宣伝に終始するのは、民主主義を破壊するものです。

 驚いたのは経済効果の試算内容です。TPPでは関税が維持されたコメや牛肉なども大幅に関税が下がったり輸入枠が拡大されたりして農業分野の打撃が大きいといわれたのに、試算では国内の生産額減少は1300億〜2100億円にとどまる見込みです。合意前2013年の政府の統一試算3兆円減と比べ桁違いの少なさです。

 半面、日本経済全体では輸出の拡大などでGDPが13兆6000億円も増えるとはじき出しました。前回政府が試算した3兆2000億円増に比べても、4倍以上です。農業への打撃はできるだけ小さく、経済への効果はできるだけ大きく見せるという狙いがありありです。

 なぜこうなるのか。同じホームページに載せられた「Q&A」には、農林水産分野では「ぎりぎりの交渉」で関税撤廃の例外などの措置が確保され、国内対策も「万全の措置を講じ(る)」からだと、都合のよい説明が並びます。政府が巨額の予算を投じて対策を講じなければならないほど、農業に致命的な打撃を与えるというのに、政府に国民の不安に向き合う姿勢も、TPPに合意した反省もありません。「Q&A」の冒頭に掲げられた「恩恵を受けるのは大企業だけではない」という言い訳こそ、日本とアメリカの大企業の利益に沿ったTPPの本質を示しているのではないでしょうか。

試算の前提確定してない

 TPPに対しては「大筋合意」に参加したカナダやアメリカ国内からも批判が相次ぐなど、調印や批准の見通しが立ちません。発効後の見直しの条項もあり試算の前提は確定していません。バラ色に宣伝する安倍政権は無責任です。

 新しい年は国民を踏みつけにする安倍政権との対決の正念場です。国民本位の政治実現のために、みなさんよい年にしましょう!


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