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2015年9月8日(火)

諫早開門 不当に棄却

漁民ら「勝つまでたたかう」

福岡高裁判決

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(写真)不当判決に怒りをにじませる原告、弁護団ら=7日、福岡高裁前

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の締め切りで、甚大な漁業被害を受けている諫早湾内の小長井(こながい)町漁協(長崎県)と、湾に隣接する大浦漁協(佐賀県)の組合員ら53人が、国に排水門の開門と損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が7日、福岡高裁でありました。

 大工強裁判長は、干拓事業と漁業被害の因果関係を認めず、原告の請求を全面的に棄却する不当判決を出しました。原告らは「開門を命じた福岡高裁確定判決(2010年)は揺るがない」として、有明海再生を実現するまでたたかい続ける意思を示しました。

 一審・長崎地裁は、小長井漁業者の開門請求を棄却した一方、漁業補償を受けていない大浦漁業者の漁業被害を認め、「事業遂行は違法」として国に損害賠償を命じていました。

 控訴審では、タイラギの漁獲量減少と事業の因果関係や漁業補償の範囲を超える被害の有無などが争点になりました。高裁は今回、漁業被害を認めながらも、事業実施や国が開門義務に背いていることによるものではないとし、一審の命じた損害賠償も取り消しました。

 原告団の松永秀則団長=小長井町漁協=は「干拓工事が始まって以来22年、タイラギは激減し、ずっと休漁状態。漁民の願いはお金ではなく、開門で有明海の異変の原因を解明してもらいたいことなんです。怒りがこみ上げるが、勝つまで頑張りたい」と力を込めました。


揺るがない開門義務

解説

 諫早湾干拓事業をめぐっては、2010年12月に福岡高裁が開門を命じる判決を出し、当時の首相が上告を断念し、確定しています。

 一国の総理による国民に対する約束を踏みにじり、憲法違反を続ける国の行為に裁判所が“加担”したも同然の極めて不当な判決です。確定判決と異なる判断が示されたことで、開門義務に従わない姿勢に裁判所が根拠を与えたと国は主張しますが、これには決定的な誤りがあります。

 高裁判決は、請求をいずれも棄却した一方、「法治国家でありながら、国が確定判決で定められた義務の履行しない状態が続いていることについて、大きな問題である」と述べざるを得ませんでした。これは請求の同じ裁判でも請求の当事者が違えば、異なる判断が出るのは法的にあり得ることを高裁も否定できなかったということを示しています。

 「よみがえれ! 有明訴訟」弁護団の馬奈木昭雄団長は、報告集会で「2005年に福岡高裁が干拓工事差し止め仮処分決定を取り消した時、われわれは一から出直しを迫られたが今回、開門義務が残っている。この権利を絶対につかんで離さない」と訴えました。

 国は、開門をめぐる別の訴訟で原告側の開門を実行させる強制力を無効にしようと、漁業者の漁業権を国の意思で取り上げることができるかのような不当極まる主張をしています。

 これ以上の憲法違反は許さないと、国民世論によってさらに国を追い詰めていくことがいま改めて求められています。(岡素晴)


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