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2012年7月4日(水)

広島・島根ルポ 米軍低空飛行の現場

地響き 泣く園児

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 米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイの日本での配備・運用計画が明らかになり、米軍機の低空飛行問題が改めて注目されています。広島県の市民団体「米軍の低空飛行の即時中止を求める県北連絡会」が6月下旬、広島・島根両県にまたがる米軍訓練空域「エリア567」下で行った現地調査に同行しました。(榎本好孝)


 「昨日も目撃したんですよ。保育園の上を飛んでから急上昇して雲の中に消えていった。(私自身は)あんな大きなのを見たのは初めて。機体が左右に揺れていた。新米(のパイロット)が操縦していると思った」

 6月28日、島根県浜田市の旭支所を訪れた時のことです。岩倉初喜・旭自治区長(副市長に相当)は興奮気味にこう語りました。

 前日の27日午後4時ごろ、米海兵隊のFA18戦闘攻撃機とみられる軍用ジェット機が、同市旭町の保育施設「あさひ子ども園」(園児数107人)の上空を低空で飛行。同園からも支所に連絡が入り、事情を聞くため職員が急いで訪問したといいます。

 保育士や保護者から聞き取ったメモを見せてもらうと、「(子どもが)怖くて家を出たくないと話をしている」「精神的に不安定になっている子どももいる」「ここ数日ひどすぎる。何とかしてほしいと目を赤くしながら話をされた」など、深刻な訴えが書き連ねられていました。

 「県北連絡会」一行は予定を変更して同園に向かい、藤田美津恵園長らからその時の様子を聞きました。

 軍用ジェット機が飛来したのは、園児たちが帰りの準備を始めていた頃、4歳児のクラスは外に出て花壇に水やりなどをしていました。その時、「地響きがして(ジェット機が)落ちるか、落ちたかと思った」(藤田園長)といいます。多くの子どもたちは耳をふさぎ、うずくまって泣く子もいました。

 藤田園長は「保育にいろいろな支障がでる。やめてほしいです」と語りました。

刑務所が攻撃目標か

 旭支所では昨年12月、米軍機の頻繁な飛行を受け、騒音測定器を設置しました。目的は、実態を告発し、低空飛行中止を訴えるためです。今年1月からの測定記録の最大値は、電車通過時のガード下の騒音に匹敵する97・6デシベルに達しています。

 旭支所の担当職員は5月に米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)の航空祭に足を運び、戦闘機のタッチ・アンド・ゴーの爆音を体験してきました。旭町で聞く激しい低空飛行の爆音と「変わらなかった」といいます。

 「エリア567」での米軍機の飛行目的の一つは、地上の建造物を目標にした模擬対地攻撃訓練です。旭町の場合、「あさひ子ども園」のそばに建つ刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」(定員2000人)の建物が目標になっているのではと指摘されています。

 低空飛行をはじめとする訓練飛行は、旭町だけでなく浜田市全体で急増しています。同市総務部安全安心促進課によると、目撃情報などは2010年51件、11年122件、12年は6月28日に訪れた時点ですでに190件に上っています。

 同課の前木俊昭課長は、昨年10月から市に情報収集員を置いたことにもよるとしつつ、「大きな音が圧倒的に増えていると思う」と語りました。

 また、「県北連絡会」一行が訪れた邑南(おおなん)町でも「しょっちゅう飛んでくる。最近はかなり低く飛ぶ」(65歳男性)「夜11時ごろまで飛んでいる」(町職員)などの証言が得られました。

オスプレイが飛来も

 防衛省は6月13日、オスプレイの沖縄配備と日本での運用について米軍が実施した「環境レビュー(審査)」を公表。沖縄に配備されたオスプレイが岩国基地など本土の米軍基地に展開し、日本各地に設けた低空飛行ルートで訓練することが明らかになりました。

 同レビューには、米軍の訓練空域である「エリア567」についての直接の言及はありません。しかし今回の調査では、同空域でFA18など岩国基地所属の米軍機を中心に低空飛行をはじめ激しい訓練が行われていることが確認できました。

 しかも、「県北連絡会」一行が6月29日に行った広島県北広島町八幡地区での調査では、町の出張所の職員が同月20日、米軍ヘリとみられる軍用ヘリ2機が低空で旋回しているのを目撃したことが分かりました。

 同町に隣接する安芸太田町では04年4月、岩国基地所属のCH53D輸送ヘリが島根県での訓練の帰りに河川敷に緊急着陸する事故を起こしています。同ヘリ部隊はその後、沖縄の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に派遣され、同年8月に沖縄国際大学へ墜落する事故を起こしました。

 「県北連絡会」の岡本幸信事務局次長は「エリア567にもヘリが飛来し、訓練することが示されている。オスプレイが岩国に来れば、当然、エリア567で訓練をすることになる」と強調します。

 北広島町議会は6月22日、同町が「これまでも米軍機の無法な低空飛行等で多大な被害を受けている」とし、「危険極まりないオスプレイの米軍岩国基地への搬入及び飛行訓練の撤回を強く求める」とする意見書を全会一致で可決しました。


 エリア567 米軍が独占的に使用している自衛隊訓練空域の米側呼称。空対空戦闘訓練(ドッグファイト)、川や道路など地形をなぞる飛行、急降下・急上昇による対地攻撃訓練など、さまざまな訓練が行われています。

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