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2021年7月27日(火)

主張

国立大学交付金

増額に転じ知的基盤を支えよ

 国立大学の人件費や研究費に使われる運営費交付金の増額が切実な課題となっています。2004年の国立大学法人化後、同交付金は約1470億円も削減されました。国立大学協会は6月中旬に発表した「提言」で増額に転じることを強く求めています。

削減によって矛盾が噴出

 文部科学省の交付金のあり方に関する検討会議が6月にまとめた報告書は、国大協の要望を取り入れませんでした。交付金削減で、日本の知的基盤を壊すさまざまな問題が噴き出しているにもかかわらず、深刻な実態を打開する姿勢がないことは重大です。

 教職員の雇用の安定化は急務です。とくに、40歳未満の任期付き教員の割合は39%(07年)から64%(17年)に急増しています。不安定な研究職は不人気となり、博士課程に進学する学生は17%(00年)から9%(18年)に激減しています。放置するならば学術の後継者が不足し、日本の社会発展の基盤を失いかねません。政府も博士課程進学者を増やすために大学院生の経済的支援を強化していますが、修了後の安定雇用を増やさないと新たな「高学歴難民」をうむだけです。安定した研究職を増やすには、交付金を増額するしかありません。

 論文数の減少など研究力低下に歯止めをかけ、回復するためにも交付金増額は必要です。

 研究力低下の原因は、交付金を削減して競争的研究資金に移す「選択と集中」により、地方大学など中小の大学の資金が枯渇し、研究が中断していることにあります。文科省の政策研究所も、研究力向上のためには、「上位層に続く層の厚みを形成するといった施策が必要」(20年3月の報告書)と指摘しています。

 学費値上げに歯止めをかけ、学生の経済的支援を強化することも待ったなしです。

 コロナ禍のもとで、バイト収入が減り、食費にも事欠く学生が多数います。異常に高い学費や貧弱な奨学金が、学生の学ぶ権利を奪っています。経済的に困難な学生の授業料免除の拡充や国立大の授業料の引き下げのためにも交付金の増額が必要です。私学助成の抜本的拡充と一体で行い、国立大学が全大学の学費引き下げを先導すべきです。

 交付金の配分のゆがみもたださなければなりません。そもそも交付金は、大学の原案をもとに文科相が定めた6年間の中期目標・計画を遂行するために国が措置するものです。大学の裁量を拡大するために「渡し切り」とされました。

 ところが、文科省が定める寄付金実績や若手研究者比率などの評価指標による傾斜配分が導入され、大学に交付金の獲得競争を毎年強いています。

傾斜配分の廃止は不可欠

 国大協は、傾斜配分は「大学の教育・研究活動の基盤を不安定化させ、その水準向上等をかえって阻害する」として廃止を求めています。国立大学法人制度の根幹を壊す傾斜配分の廃止は当然です。

 国大協は教育研究を「現代社会の発展」と「未来への先行投資」と位置付けることを求め、「コロナ新時代の新たな価値の創造と社会基盤の構築を先導する」と決意を表明しています。政府は、これに正面から答え、交付金の増額に政策転換すべきです。


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