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2017年8月27日(日)

2017とくほう・特報

高校生非核特使の“発言封じ”

安倍政権は“核なき世界”をどこまで妨害するのか

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 歴史的な核兵器禁止条約の国連会議に参加しなかったばかりか、署名も拒否している安倍政権。今度は、国連欧州本部で開かれた軍縮会議で外務省の「ユース非核特使(高校生平和大使)」の発言を「問題視する国があった」として封殺しました。核保有国と非保有国との「橋渡し役」どころか、核保有国側にすり寄り「核兵器のない世界」実現へ、妨害する立場を再びみせました。(阿部活士)


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(写真)原水爆禁止2016年世界大会長崎で発言する高校生平和大使ら=2016年8月9日

意見交換会でお茶濁し

核保有大国に届かず

 「わたしたちは、戦争も核兵器もない『平和な世界の実現』を求めます」。「高校生平和大使」は、こんな表題の「高校生1万人署名活動」で集めた署名の束を国連に届けようと、被爆地・長崎から1988年に始まりました。

 「微力だけど、無力でない」を合言葉に全国に大使をつくる運動として大きく広げてきました。「核兵器のない世界」をめざす市民社会の一翼です。

 原水爆禁止世界大会国際会議宣言などの起草委員長を務める冨田宏治さん(関西学院大学教授)は「毎年のように世界大会でも運動のエールを交換してきました。高校生が熱心に行ってきた活動です。心強く、温かく応援してきた」といいます。

 昨年も「原水爆禁止2016年世界大会・ナガサキデー集会」には第19代高校生平和大使の関口萌さんが登壇し「核と人類は共存できないということを国連で訴えます」と決意を表明しました。

 日本政府も、被爆者が高齢化するなかで次世代の活動として注目し、2012年に「外務大臣感謝状」を授与。13年に創設した「ユース非核特使」の第1号に選び、14年以降軍縮会議の会議場でスピーチしてきました。

 しかも、高校生平和大使結成20年目の節目のことし、核兵器禁止条約採択という世界の大きな流れの中で21万もの過去最大の署名が集まりました。その晴れ舞台のスピーチを、なぜ日本政府は封殺したのか。

 外務省軍備管理軍縮課の田口一穂首席事務官は、「軍縮会議は政府間交渉の場であり、そこにNGOを入れる日本の例外的なやり方を問題視する国があった。軍縮会議はコンセンサス方式なので、高校生大使のスピーチは難しい状況」だと回答しました。

 記者の「問題視する国はどこか」の問いには「外交的なことがあり答弁を控える」。

 「NGOでなく、日本政府が決めた『外務省のユース非核特使』でしょ。問題視するほうが問題ではないか」と問うと、答えにつまってしまいました。

 結局、政府は、高見沢将林軍縮大使主催で軍縮会議日本政府代表部内で開いたユース非核特使と各国外交団との意見交換会でお茶を濁しました。出席した核保有国は、外務省発表でフランス、中国、ロシアとパキスタンだけ。肝心の核保有大国・アメリカとイギリスは“聞く耳持たず”で不参加でした。

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(写真)核兵器禁止条約の国連会議会場で日本の席に置かれた、「あなたがここにいてほしい」と書かれた折り鶴=3月28日、ニューヨーク(遠藤誠二撮影)

被爆者の願いを無視

非核の政府つくろう

 高見沢軍縮大使といえば、核兵器禁止条約を交渉する国連会議(第1会期)初日、わざわざ「参加は困難だ」と表明した人物です。「核軍縮を進めていくには核兵器国の関与が不可欠だ」と語りました。空席になった日本政府席に置かれた折り鶴のメッセージが、唯一の戦争被爆国の不参加の失望感を表していました。「あなたがここにいてほしい」

 国連会議(第2会期)の7月7日、122カ国の賛成で採択した核兵器禁止条約について、長崎市の田上富久市長は、平和式典のなかで「『ヒロシマ・ナガサキ条約』と呼びたい。日本の参加を国際社会は待っています」と呼びかけていました。

 今回の国連会議は、被爆国の願いを伝える機会でした。しかし、日本政府の対応に、被爆者や関係者は失望感をより深めました。

 「高校生は当然“禁止条約を歓迎します”と話すでしょう。外務省は日本政府の立場が批判されたら困るのでブレーキをかけたということだ」と指摘するのは、高校生平和大使の活動を支援してきた長崎県被爆者手帳友の会の井原東洋一会長です。

 長崎の被爆3世で、「ヒバクシャ国際署名」のキャンペーンリーダーを務める林田光弘さんは、第12代高校生平和大使(2009年)として国連欧州本部に行きました。

 平和や核兵器廃絶を願う市民らから選ばれた「大使」とともに、14年からは外務省から選ばれた「特使」という二つの役割を持つようになったといいます。

 「演説拒否はこの二つの役割を否定されたことになります。非核特使という制度をつくった外務省がそのまま引き下がったのは納得がいかない。高校生の純粋な思いと行動を都合のいいときは利用し、悪いときは引き下げる。“道具”にしているようで、高校生に失礼です」

 さきの冨田さんは、「外務省の説明どおり文句をつけた国がいたのか、自作自演かはわからない」としたうえで、「今回の事態は、禁止条約に期待するとの高校生のスピーチを提供したくない日本政府の“本心”と、聞きたくない国があることを明らかにしました。核保有大国と核の傘の下にある日本国内での活動が決定的に大事だということです。被爆者の願いを無視し、若い世代の思いも封殺する安倍政権は打倒するしかありません。唯一の戦争被爆国たる非核の政府をつくりましょう」と呼びかけます。

 井原さんは、「長崎原爆の日」の9日、五つの被爆者団体代表の一人として、安倍首相への要請の場に臨んだ言葉を再び使いたいといいます。「あなたはどこの国の首相なのか。禁止条約に入るべきです」


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