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2017年8月12日(土)

主張

山での安全

事故防止は指導者養成がカギ

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 11日は山の日でした。昨年から始まった国民の祝日で、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日です。

 山の日は、山岳団体が中心になって、関係省庁や地方自治体、環境団体、観光業者、山小屋経営者らに働きかけてできました。その趣旨を定着させるため、関係者は「全国山の日協議会」をつくり、毎年この日に記念行事を行うことにしています。昨年は長野県松本市の上高地で、今年は栃木県那須町で開催されました。

増え続ける山岳遭難

 那須町は今年3月、高校体育連盟登山専門部による春山安全登山講習会で7人の生徒と教員1人が亡くなった雪崩事故が起きたところです。事故原因の究明は専門家による検証委員会によって進められ、10月初旬には再発防止策を盛り込んだ最終報告書が公表される予定です。社会的な影響が大きかっただけに、同様の事故をどのように防いでいくかが注目されます。

 全国の山岳遭難は年々増え続けています。警察庁がまとめた昨年の遭難は2495件、遭難者数は2929人でした。一昨年よりは減りましたが、警察庁は「10年でみると急カーブで上昇している」といいます。遭難をどう減らしていくかは、山をめぐる課題の中で、最も大きなテーマになっています。

 事故防止に大きな役割を果たすのがリーダーや指導者の力量です。しかし、その育成が大きく立ち遅れているのです。6月末に出された先の検証委員会の第1次報告書でも「講師等の雪崩に関する知識が未熟ないし不十分であった」と指導者の問題が挙げられています。

 日本山岳スポーツクライミング協会の公認指導員は約2千人で、最盛期の半分まで減っています。約800万人ともいわれる登山人口に比べれば極めて少ない人数です。

 国内の指導者養成機関は、1967年につくられた国立登山研修所です。しかし、2000年の研修中に大学生2人が死亡する事故が起きて以来、年間研修数は13回(1996年)から8回に減ってしまいました。一般登山者を対象にした雪山研修もなくなり、役割を十分に果たしているとはいえない現状にあります。

 英国でも71年、生徒6人と教員が吹雪で死亡する事故が起き、社会問題になりました。しかし、その後の経過が日本とは大きく違っています。事故を契機に山岳団体が協力し、公的登山の引率者や講師を養成する研修機関ができました。いまではウオーキングからスポーツクライミング、冬山登山など19種類のコースに年間約7千人の受講者があり、国の補助も受けながら、リーダーや指導者を準国家資格として認定しています。同機関は山岳救助隊から事故情報を受けて、どうしたら事故が防げるかを伝えるなど、安全な登山を推進するうえで、重要な組織になっています。

求められる国の施策充実

 日本でも山岳団体と国が協力し合うのはもちろんです。同時に、山岳遭難を減らすためには何よりも国の姿勢が決定的です。登山研修所の研修を充実させるための予算措置や、自治体の登山環境整備や情報提供に対する助成など、あらゆる施策を講じることが求められます。


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