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2017年6月27日(火)

築地居ながら再生は可能

東京電機大学名誉教授 今川憲英さんに聞く

豊洲移転には反対です

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 小池百合子東京都知事が、築地市場を豊洲新市場(東京ガス工場跡地)に移転し、伝統のある築地の建物を解体、再開発するという「基本方針」を表明したことに、異議を唱える建築家が相次いでいます。日本を代表する構造設計家の一人で、古くなった建物を解体するのでなく、手を加えて再生・延命させる「外科医的建築家」の今川憲英・東京電機大学名誉教授に聞きました。(岡部裕三)


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(写真)今川憲英(いまがわ・のりひで)氏1947年4月生まれ。日本大学卒業。構造設計1級建築士で、日本を代表する構造建築の外科医的建築家の一人。「TIS&PARTNERS」の代表

 ―小池知事は、築地市場を解体して再開発する方針です。

 私は豊洲移転には反対です。築地市場を存続して、業者が営業を続けながら「居ながら再生」を行うことしか、選択肢はないと思っています。

 豊洲に移すことは、脈々と続いた築地が築いた文化と商圏、銀座に近くて行きやすいということを考えると、マイナスばかりです。

 希望する市場業者には、移転後、築地に戻ることも検討するといっていますが、豊洲に移転して5年後に築地を再開発するということは、人間の体に例えれば5年間冠動脈を止めるようなものです。

 ―小池知事は、築地市場を「居ながら再整備」はできないとしています。

 私は東京電機大の研究室で、2010年ごろから自主的な研究開発として築地再生プランをつくってきました。

 築地市場の建物は完成して83年たちましたが、東日本大震災をはじめ多くの地震に耐えてきました。建物の寿命をさらに80年生かすというのは、たやすいことです。

 築地市場は、建て直しをするのではなくて、築地の機能をそのまま残しながら、建物の再生・保存をすることが、築地の文化を継承する一番確かな方法だと思っています。

 私の考えた再生案は、市場業者が営業を続けながら再生工事を行うという方法です。建物の延べ床面積は約10万平方メートル、再整備の期間は3年くらいで、再生費用は800億円程度でできます。

 仲卸売り場の上を青果などの売り場に使用できる2、3層の大きな空間と、屋根の上に駐車場をつくり、スロープで荷を移動できるようにする方法です。1階にはあらかじめ1ブロック分の場内種地(改修のために一時移転させるための土地)を確保して仲卸施設を造り、水産の仲卸を順次移動して工事し、今まで通り1階で営業ができるようにするというプランです。

 私が再生にかかわった横浜赤レンガ倉庫(横浜港にある歴史的建造物)は、壁がレンガ造りで屋根が鉄骨です。築地市場も屋根が鉄骨です。

 築地市場のカーブ状の仲卸の空間は構造的には鉄骨屋根構造なので、耐力不足は鉄骨の柱脚を根継ぎなどの方法で補強します。屋根の耐力不足はトラス構造(部材の両端を複数の三角形の骨組みで連続させる構造組み)のシステムを利用して、2段のトラスにする補強で再生可能です。

 RC(鉄筋コンクリート)の耐力不足は現在、開放的でサッシのような耐震補強システムで再生できます。床の部分などの仕上げは新しくすれば再生は容易です。

 ―「安全・安心」を言っていた小池知事が、汚染を残したまま移転を表明しました。

 小池知事が都議選(告示日)の直前に豊洲移転方針を公表したことは、豊洲の土壌汚染問題や、市場業者や都民よりも、知事としての、党としての政治的な判断を優先したのではないかと思います。

 私は、豊洲移転を表明したら小池さんはもう信用できなくなると危惧していました。

 今回の知事の決定は、とても“都民ファースト”とは言えないと思います。移転を主張してきた自民党(政治)の根を断ち切ることはできなかったということでしょうね。


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