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2017年1月30日(月)

トランプ氏 大統領令乱発

環境破壊・移民排除 あらわ

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 トランプ米大統領は就任わずか8日間で、さまざまな大統領令に署名しました。その内容からは環境破壊、移民排除の姿勢が見て取れます。(ワシントン=遠藤誠二、洞口昇幸 外信部=島田峰隆)


パイプライン推進 温暖化対策敵視

 トランプ大統領は2本の石油パイプライン建設を推進する大統領令に署名しました。

 1本は、イリノイ州からノースダコタ州を貫く「ダコタ・アクセス・パイプライン」です。ノースダコタ州の先住民の土地の近くを通り、水源となっている川を横切ります。先住民は、飲料水が汚染され貴重な先祖の遺産が汚されるとして昨年に反対運動を展開。オバマ前政権は昨年12月、建設中止を決めていました。もう1本のカナダから米国への「キーストーンXL」も、オバマ政権が2015年11月に建設許可を却下していました。

 環境を守る立場にたたなければならない環境保護局(EPA)長官(プリュット長官)自身が、オクラホマ州でエネルギー業界の肩を持ち活動し、地球温暖化に科学的根拠があることへ懐疑的な考えを持つ人物です。国務長官、エネルギー長官もエネルギー業界寄りの人物です。

 トランプ大統領は就任した20日に、前政権の地球温暖化対策行動計画を撤回。EPAなどの職員に、SNSなどで気候変動に関する情報発信を制限し、ホームページから気候変動関連の部分を削除するなど露骨な環境保護敵視行動に出ました。

 こうした「弾圧」に抵抗し、EPAなどでは非公式アカウントが開設され、気候変動に関する情報が発信されています。

写真

(写真)メキシコ国境での壁建設にむけた大統領令署名に抗議してホワイトハウス近くで抗議デモを行う市民=25日、ワシントン(遠藤誠二撮影)

米メキシコ国境に壁 効果には疑問

 トランプ政権の移民などに対する差別・排外主義を顕著に示すのが、メキシコとの国境への壁の建設を指示した大統領令です。「不法移民流入の防止策」と称する壁の建設について、国境警備を担当する国土安全保障省のケリー長官は議会の公聴会で「物的な障壁はそれ自体、うまく機能しない」と断言。防止策としての効果に疑いがあります。

 「過激主義に迎合し、米国民を分断し、弱める」などと、米人権擁護団体や労働組合から非難されています。

 総延長3200キロの壁の建設に巨額の費用がかかることも問題とされています。トランプ政権は建設費用をメキシコ政府に払わせる、もしくはメキシコからの輸入品に対し、建設費に充てる課税を設定する考えがあると表明。支払いを拒否するメキシコのペニャニエト大統領は、予定していたトランプ氏との会談を中止しました。

 同大統領令には、連邦政府の強制送還に協力せず、不法移民を保護してきた地方自治体への補助金の停止も盛り込まれました。「脅しには屈しない」(ボストンのウォルシュ市長)など、自治体首長から猛反発の声が上がっています。

TPP離脱

背景に反対運動の力も

 「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領は、環太平洋連携協定(TPP)から「永久に離脱する」とした大統領令に署名し、米側により有利な中身の2国間貿易協定のための交渉を求めています。

 トランプ氏はカナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)についても再交渉を表明し、交渉が難航する場合は、NAFTAからの撤退の可能性を示しています。

 大統領選時からトランプ氏は、NAFTA再交渉やTPP離脱を主張。背景には自由主義的なNAFTAで、米国内の雇用が大量に海外流出し、経済や暮らしが大打撃を受けたことへの米国民の強い反発があります。NAFTAの強化版と言われるTPPについても、米市民・諸団体は広範な反対運動に取り組んでいました。

 米最大の労働組合全国組織、労働総同盟産別会議(AFL・CIO)のトラムカ議長は声明で、「労働、環境、消費、公衆衛生の分野などの諸団体の力強い連合が昨年、TPP阻止のために一体となった」と、TPP離脱は運動の成果であることを強調しています。

 トラムカ氏は、大統領令は必要でありながら十分ではないと指摘。環境を保護し、労働者への公正な賃金や職場での権利と安全を確実にする新たな貿易・経済のルールをつくるために、「われわれは激しい運動を続ける」と述べています。


米大統領令

議会反発・最高裁判断 思い通りには進まず

 大統領令とは、大統領が議会の承認や立法を経ることなく、連邦政府や軍に直接発令する命令です。法律と同じ効力を持ちます。議会を通さずに迅速に政策を実現する手段とされています。

 議会は大統領令に反対する法律を制定して対抗することができます。最高裁判所が違憲判断を出すこともでき、大統領の思い通りに進むわけではありません。

 オバマ前大統領は、議会の過半数を野党の共和党が占めるなか、大統領令を次々と発令しました。連邦政府による温室効果ガス排出量削減、政府の契約職員の最低賃金引き上げなどです。

 ただ議会を通さない方法に共和党はますます反発を強めました。オバマ氏は2014年秋の大統領令で、不法移民に条件付きで滞在許可を与える改革案を進めようとしましたが、共和党知事らが提訴し、最高裁判断で改革案は阻止されました。“テロ容疑者”を収容するグアンタナモ収容所の閉鎖は、8年前の就任2日後に発令した大統領令でしたが、議会の反発で実現できませんでした。

 米メディアによると、トランプ氏の大統領令のいくつかについて合法性に疑問が出されており、訴訟になる可能性があるといいます。また、相次ぐ大統領令に共和党内からも議会権限の侵害だと懸念が出ていると伝えています。


■トランプ氏が就任後8日間に署名した主な大統領令

20日 オバマケア(医療保険制度改革)撤回

23日 環太平洋連携協定(TPP)撤退・妊娠中絶支援のNGO助成金禁止

24日 二つの石油パイプライン建設促進

25日 メキシコ国境壁建設推進・不法移民保護都市への補助金カット

27日 中東・北アフリカの特定国からの入国規制


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