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2017年1月24日(火)

GPS捜査“記載するな”

警察庁 文書で指示 人権侵害の手法隠す

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 裁判所の令状なしに捜査対象者の車両などに衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付ける警察の捜査が各地で問題化していますが、警察庁が都道府県警向けに出した通知文書で、捜査書類にGPSの存在を記載しないよう指示していたことがわかりました。専門家は「プライバシー侵害のおそれが強い捜査手法を用いながらその存在すら隠すのは問題だ」と批判しています。


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(写真)警察庁が国会議員事務所に開示した「移動追跡装置運用要領」。黒塗り部分の一部が明らかになりました

 この通知文書は警察庁刑事局による「移動追跡装置運用要領」(2006年6月30日付)。GPS捜査を「任意捜査」とし、定義や要件、手続きなどを定めています。

 この中の「保秘の徹底」とする項目に、「捜査書類には、移動追跡装置の存在を推知させるような記載をしない」と明記されていました。

 警察庁が開示した文書では当該部分が黒塗りでした。しかし、覚せい剤密売を繰り返したとして麻薬特例法違反罪に問われた男性被告の福井地裁での裁判で昨年3月、弁護側が検察側に開示を求めて明らかになりました。

 文書にある「捜査書類」には検察官に送致する書類のほか、警察内部での報告書などが含まれるとみられ、弁護人を務めた吉川健司弁護士は「事実上、一切書類に残すなという指示だ」とみています。

 GPS捜査については、令状なしで実施した場合の違法性が各地の刑事裁判で問題になっています。弁護側が「プライバシーの侵害が大きい強制捜査であり、令状なしで行ったのは違法」とするのに対し、検察側は「目視や尾行などの任意捜査の補助手段にすぎず、令状は不要」などと主張。地裁・高裁レベルの判断が分かれており、最高裁が今年度内にも統一判断を示すとみられています。

 実際の裁判では、警察がGPSを使った事実を検察や裁判所に事前に伝えず、被告人や弁護人の指摘で初めて明らかになったケースが複数あります。

 弁護側が詳細な実施状況の開示を求めても、捜査側が「資料を作成していない」として明らかにならない例も。昨年12月22日の東京地裁立川支部(宮本孝文裁判長)の証拠決定はこの点を「はなはだ遺憾」と述べて捜査側を批判。令状なしでのGPS捜査を「違法」と位置づけました。

 GPS捜査は技術の進歩に伴い警察での運用が広がっているとみられますが、明確な法的根拠がありません。


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