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2016年9月15日(木)

2016とくほう・特報

認知症になっても暮らし続ける街に

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 高齢になるに従い増えていく認知症の人。462万人(2012年、厚生労働省)と推計されており、予備軍を含め社会で支援するとりくみが広がっています。敬老の日(19日)を前に、認知症予防と認知症になってもくらせるまちづくりを考えました。

 (武田恵子)


その人にあわせた支援

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(写真)天沼健康友の会主催のいきがい活動で「ころばん体操」をする人たち=8日、東京都杉並区(山城屋龍一撮影)

 東京都杉並区にある天沼診療所の患者、S子さん(91)は、高血圧症に加え、アルツハイマー型認知症があります。1人ぐらしのS子さんへの支援を看護師長の中村愛美(まなみ)さんが語ります。

 「認知症といっても一人ひとり生活と症状が違います。その人にあわせた支援が大切になってきます」

 看護師が受診を促す電話をしても顔をみせないS子さんですが、患者や地域の人たちでつくる「天沼健康友の会」(友の会)のいきがい活動には参加しています。友の会の役員が送迎をしていたからです。会場は診療所と同じ建物です。S子さんが参加しているおしゃべり会と食事会のさいに、受診も済ますことができました。

 もう一つ、薬の内服が心配でした。S子さんは介護保険を利用しているので、担当のケアマネジャーと相談の上、デイサービスやヘルパーの協力を得ました。その後、訪問診療と訪問配薬もおこなうようになりました。

 認知症の人を支援するのは、医療・介護の専門家だけではありません。全国で認知症サポーター養成講座(専門家による1〜2時間ほどの話)を受けた人は750万人を超えます。

見守りワッペンの裏は

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(写真)「出かけたいでんちゃん」ワッペン

 8月末の日本高齢者大会(東京)の認知症分科会。兵庫県姫路市にある大塩・的形地区の地域包括支援センターの見守り活動「でんちゃんプロジェクト」が紹介されました。

 支援を希望する「徘(はい)徊(かい)」の可能性のある人に目印になるワッペンをつけてもらいます。でんでんむしの形につくってあり、「出かけたいでんちゃん」と呼びます。ワッペンの裏に本人の名前、住所、家族の連絡先を書き、本人が気にならず外から見える場所につけます。

 もう一つ、啓発者用の「伝えたいでんちゃん」があります。外で「出かけたいでんちゃん」に出会ったときに、「どこに行くの」とやさしく声をかけ、自然にワッペンをめくり、家族などに連絡します。

 とりくみから2年。「『出かけたいでんちゃん』を地区から離れた姫路駅でみかけ、家族に連絡した事例もありました」。姫路医療生活協同組合副理事長の福居良介さんが分科会で話しました。

図書館が橋渡し役に

 今年1月、30人の職員全員(半数が非正規)が認知症サポーター養成講座を受けたという職場があります。

 川崎市宮前区にある市立宮前図書館です。昨年12月から館内の一角に、「認知症の人にやさしい小さな本棚」を常設しました。

 「図書館には、認知症ではないかと思われる方の利用も少なくありません。昨年夏に試みとして認知症に関する図書のミニ期間展示を行ったところ貸し出しが多く、反響があったので、市の保健福祉の担当部署と連携をとって常設にしました」。経緯を話すのは、同図書館の担当係長、舟田彰さんです。

 コーナーには認知症に関する本のほか、区内の家族会や地域包括センターなどを中心に案内のチラシが配置されています。

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(写真)呑海沙織さん

 高齢社会における図書館の役割にくわしい筑波大学教授の呑海(どんかい)沙織さんは、「認知症かもしれないと思っても当事者は医師にかかるのをためらうことがあります。図書館は認知症への理解を深める場になるとともに、当事者の尊厳を保ち、医療へと橋渡しする役割を担えるのではないか」と語ります。

 宮前図書館では今年に入って、地域の高齢者デイサービス事業所に出かけ、その施設の利用者に対して、絵本や紙芝居の読み聞かせを行いました。その際、主に将棋・囲碁、旅行の本、全国各地の風景の写真集、昔の遊び、昭和レトロを感じる「もの」を扱った本を持参しました。

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(写真)「認知症の人にやさしい小さな本棚」の前で舟田さん(左)と市の保健福祉担当者

 舟田さんとともに事業所を訪問した呑海さんは、最初は静かに写真集や本のページをめくっていたデイサービス利用者が、徐々に隣の人と談笑していく姿を見て、「感動した」といいます。

 2007年に図書館の国際組織である国際図書館連盟が、「認知症の人のための図書館サービスガイドライン」を発表しています。その結論部分にこうあります。「認知症の人が身体と精神の両方に刺激を受けたという兆候を明らかに示したとき、(支援者は)大きな喜びを感じるのである」

早い診断とケアが大事

 「認知症はありふれた病気でだれもがなる可能性のある病気です。特別な病気だという偏見をなくすことが認知症予防の大前提です」。こう力を込めるのは、日本認知症予防学会理事長の浦上克哉さん(鳥取大学医学部教授)です。

 予防学会の発足は2011年。予防の考え方には病気の発症予防(1次予防)だけでなく、病気の早期発見と早期治療(2次予防)、病気の進行防止と再発予防(3次予防)が含まれます。

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(写真)浦上克哉さん

 462万人と推計される認知症の人のうち、「診断を受けているのは半分ほど。早く診断してケアすることが大切です」と話します。

 認知症の7割を占めるアルツハイマー型認知症は、「記憶の貯金箱」である脳の海馬という部分が萎縮していきます。海馬が小さくなると新しい記憶が入らなくなり、さっき話したことも忘れてしまいます。「『私が覚えておいてあげるから』と言って安心させることが大事。必要なのは、記憶のつえに周囲がなってあげることです」

 アルツハイマー型認知症の場合、必ず出る中核症状は、認知の障害です。「徘徊」や暴言などは周辺症状とされています。「周辺症状が認知症の主たる症状だという誤解も少なくありません。早期に診断し治療がうまくいっている人では周辺症状がほとんど出ないで一生を過ごす方も多くいます」と浦上さん。また、「何もわからなくなるというのも誤解です」と指摘します。

 常時、認知症の人を支える家族の苦労は並大抵ではありません。認知症の人は、家族と旅行に出かけても帰ってきたらすっかり忘れていることもしばしば。浦上さんが、旅行中の様子を家族に尋ねると、「笑っていた」「喜んでいた」との返事をもらいます。「それでいいんですよ」と浦上さんは家族を励まします。


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