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2016年6月18日(土)

国地方係争委「辺野古判断せず」

政権の民意無視が招いた矛盾

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 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う辺野古埋め立ての可否をめぐり、総務省の第三者機関・国地方係争処理委員会は17日、国の是正指示の違法性を判断をしないとの決定を下しました。一見消極的にみえますが、少なくとも、「国寄り」とされていた専門家で構成されている同委員会が安倍政権による辺野古への新基地建設強行を肯定できなかったことは、「新基地ノー」の県民世論の強さの反映といえます。

 琉球大学の徳田博人教授(行政法)は、「このような結論もある程度想定していた。係争委は県民世論を無視できなかったという意味で、実質的には県の勝利ではないか」と評価します。

 沖縄県の仲井真弘多前知事による辺野古埋め立て承認が公有水面埋立法の要件を満たしていないとして、翁長雄志知事は昨年秋、承認を取り消しました。石井啓一国土交通相はこれを「違法」だとして地方自治法245条7の1に基づいて3月16日、「承認取り消しを取り消せ」と是正指示を出しました。県はこれを不服として同日、係争委に審査を申し出たのが発端です。

 この審査は、辺野古新基地建設をめぐる訴訟で3月4日に福岡高裁那覇支部が提示し、国と県が同意した和解条項に基づくもの。ここでは、係争委が何らかの結論を出し、これに対して県が1週間以内に福岡高裁に提訴して裁判をやり直すという日程が想定されていました。しかし、係争委の判断回避により、この日程自体が不透明になりました。

 今後、国と県がどのような動きを取るのか、現時点ではみえません。ただ、「来春までに判決が確定し、国が勝訴する」という日程は大幅に狂い、新基地建設はさらに遅れ、迷走の度合いを強めるのは確実です。

 民意を無視して新基地建設を推し進めてきた安倍政権がみずから生み出した矛盾と言えます。

 (竹下岳)

問われる存在意義

 総務省の第三者機関である国地方係争処理委員会は、1999年の地方自治法改正に伴い創設されました。

 改正の趣旨は、地方を国の手足としてきた機関委任事務を廃止し、国と地方が上下・主従ではなく「対等・協力」の関係に立つことを前提に、国の関与について新たなルールを定めることにありました。

 その中で係争委は、国の関与をめぐる争いで、司法裁判よりも前に行政内部で中立・公正な立場から解決を図る役割を担っています。いわば憲法の保障する地方自治を実現するための“救済窓口”です。

 しかし、係争委は過去3件の審査案件のうち2件は「審査になじまない」として、「門前払い」で却下(表)。今回の案件でようやく、実質審査を行いました。辺野古の埋め立てをめぐる審査で、係争委の存在意義そのものも問われたと言えます。

国地方係争処理委員会のこれまでの審査案件

 2001年 横浜市が総務相の不同意めぐり申し出⇒勧告

 2009年 新潟県が国交相の認可めぐり申し出⇒却下

 2015年 沖縄県が国交相の執行停止決定めぐり申し出⇒却下

 2016年 沖縄県が国交相の「是正の指示」めぐり申し出⇒判断せず


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