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2016年6月4日(土)

安倍首相が繰り返す「有効求人倍率上昇」

背景に雇用の劣化

移動激しく絶えず求人

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 安倍晋三首相は「有効求人倍率は24年ぶりの高い水準」と繰り返し、アベノミクス(安倍政権の経済政策)は失敗していないと言い張っています。有効求人倍率が上昇している原因は、雇用の劣化による労働力不足です。アベノミクスの成果などではありません。(山田俊英)


 有効求人倍率は、ハローワークで仕事を探している人(求職者)1人当たりに企業などから何件の求人があったかを示す統計です。実際に就職が増えたかどうかを示す指標ではありません。厚生労働省が集計して毎月発表します。4月の有効求人倍率(季節調整値)1・34倍は求職者100人に対して134件の求人があったことを意味します。

求職者の減少で

 安倍首相は有効求人倍率の上昇を景気回復の指標としています。しかし、厚労省の統計(一般職業紹介状況)で安倍政権発足直後の2013年1月と直近の16年4月を比べると、有効求人数は201万人から251万人へと1・2倍に増えていますが、有効求職者数は239万人から187万人に2割以上減。職を探す人の減少が有効求人倍率を押し上げています。

 東京工科大学の工藤昌宏教授は背景として雇用環境の悪化を指摘します。

 「有効求人倍率が上昇している原因は、サービス産業(飲食業等)、建設業など一部の業種での労働力不足にあります。特に建設業では東日本大震災の復興や公共事業などで一時的に労働力需給がひっ迫しており、それが求人倍率を引き上げています。この分野では、非正規雇用が多い上、低賃金のため労働力の移動が激しく、景気に関係なく慢性的な労働力不足に陥っています。このことが有効求人倍率を引き上げる原因になっています」

正社員採用は減

 しかも、正社員の有効求人倍率は4月で0・85倍。求人が求職者数を下回っています。

 「有効求人倍率の上昇をもってアベノミクス効果などというのは筋違いです。それどころか、現在の倍率上昇は非正規労働の増大を反映したものですから、逆に雇用環境の悪化を意味するといってもいいと思います」と工藤教授は言います。

 実際に就職できた正社員の数は2014年後半から減少傾向です。同年5月には7万3000人でしたが、16年4月には6万5000人に落ち込みました。

 民間信用調査会社、帝国データバンクは3月、中小企業を中心に新入社員の採用意欲が鈍っているとの調査報告を発表しました。

 1万497社から回答を得たこの調査で「16年度、正社員の採用予定がある」(62・9%)、「非正社員の採用予定がある」(48・8%)と答えた企業の割合はいずれも6年ぶりに前年を下回りました。「大企業の(正社員)採用意欲は6年連続で増加し8割を上回っている一方、中小企業は57・3%と6年ぶりに悪化した。中小企業の採用意欲はやや陰りが見え始めた」と帝国データは指摘しました。

 14年4月の消費税増税で消費の低迷が長引き、中小企業は新規採用を控えざるをえなくなっています。中小企業が雇用する労働者数は日本の雇用の7割を占めます。安倍政権を退場させ、中小企業と国民がうるおう経済政策に転換することが打開の道です。

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