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2016年5月18日(水)

熊本地震 原発の耐震性に懸念

“繰り返し地震動”考慮せず

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 熊本地震は発生から1カ月過ぎ、これまでの日本の災害対策では想定されていない、活発な余震活動などが観測されています。震源から約80キロには九州電力川内(せんだい)原発が全国で唯一稼働を続けており、地元をはじめ全国から運転を止めてという声が上がっていますが、原子力規制委員会は、安全上の問題があると判断していないと主張しています。熊本地震の実態から、原発の規制基準の問題点がさらに明らかになってきました。 (松沼環)


図

複雑な活動

 熊本地震では、4月14日のマグニチュード(M)6・5の地震に続いて16日のM7・3の地震が発生、人が感じられる余震はすでに1400回を超え、内陸地震で日本の観測史上最多だった2004年の中越地震を上回る余震が観測されています。さらに4月16日以降、活動は広域化。九州を横断する120キロを超える地域で震源が移動しています。

 立石雅昭新潟大学名誉教授は、「大きな余震がなぜ活発なのかわかりませんし、震源がこれからどう移動するのか、予測できません。川内原発の近傍には市来断層帯、甑(こしき)断層帯が分布している。これらの断層が刺激され地震が発生する危険性もある。少なくとも川内原発は停止した上で検証すべき」と指摘しています。

 熊本地震は断層評価の難しさも示しました。

 16日の地震の震源とされる布田川(ふたがわ)断層帯の北西の延長線上に、これまで活断層が見つかっていなかった阿蘇山北部に断層活動によると見られる地表のずれが見つかりました。また、布田川断層の北東部で枝分かれする分岐断層も発見されました。

 立石氏は「事業者の調査に頼った原発の断層評価は不十分です。再調査が必要です」と話します。

繰り返す

 熊本地震の一連の地震活動では、震度7が2度、震度5弱以上も18回発生しています。繰り返される強い地震動(揺れ)に対する原発の耐震性が懸念されています。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は会見で、基準地震動(原発で想定する最大の地震動)レベルの地震が繰り返された場合の原発の耐震性を問われ、「弾性範囲にある分には5回、10回、100回ぐらい繰り返したって何も起こらない」、「変形が出るような構造物もゼロではないということだが、安全上に影響を及ぼすことはないと思います」(4月20日)と答えています。

写真

(写真)全国で唯一稼働中の九州電力川内原発=鹿児島県薩摩川内市

 物体に力を加えたとき、力を加えるのをやめれば元に戻る場合を「弾性範囲にある」といいます。加える力がある限界を超えると、力を取り除いても元に戻らなくなる塑性(そせい)変形を起こします。

 原発の耐震性に関する評価ガイドは、基準地震動に対して弾性範囲であることを求めていません。

 ガイドは、基準地震動に対して「安全機能が保持できること」を要求。基準地震動の半分を下回らないようにと定める地震動に対して「おおむね弾性状態に留まる範囲で耐える」ことを求めており、ここでも部分的に弾性範囲を超えることが許されているのです。

 安全上重要な機器が基準地震動に対して弾性範囲を超えている場合、通常、力を繰り返し受けることによる材料の疲労を評価し、安全機能が保持されるかを確認します。この場合、力のかかる回数が評価に直接影響します。

 元原発設計者の後藤政志さんは、川内原発の基準地震動620ガル(ガルは加速度の単位)は過小評価だと指摘。「九電の評価でも川内原発で、基準地震動に対して弾性範囲を超えてしまった機器が多くあり、余裕があるとはいえない。原発の疲労評価では、熊本地震のように繰り返し強い地震に見舞われることは想定していない」と強調します。


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