2016年4月26日(火)
ハンセン病特別法廷
最高裁が元患者らに謝罪
憲法違反は明言避ける
ハンセン病患者の裁判を隔離施設などで行った「特別法廷」の問題で最高裁は25日、最高裁判所によるハンセン病を理由とする裁判所外の開廷の必要性の認定判断の運用は、裁判所法に違反するとした検証報告書を公表しました。患者に対する偏見・差別を助長することにつながったとした上で、「人格と尊厳を傷つけるものであったことを深く反省し、おわびする」と謝罪しました。
今崎幸彦事務総長が会見し、「過ちと反省を忘れることなく今後の教訓とし、二度と起こさないようにする」と述べました。患者の差別的取り扱いについては、憲法14条の平等原則違反である疑いが強いとするにとどまりました。
一方、有識者委員会(座長・井上英夫金沢大学名誉教授)の意見は、ハンセン病を理由とした特別法廷が憲法の平等原則に反するとし公開原則については違憲の疑いを指摘しています。
最高裁の寺田逸郎長官と判事14人でつくる最高裁判官会議は、談話を発表。最高裁の「差別的な姿勢は、当事者の基本的人権と、裁判のあり方をゆるがす性格のものだった。人権を擁護するために柱となるべき立場にありながら、このような姿勢に基づく運用を続けたことに責任を痛感する」としました。
報告書公表を受け、元患者らでつくる「全国ハンセン病療養所入所者協議会」など3団体は同日、菊池恵楓園(けいふうえん)内で会見し、声明を発表。「憲法に違反することを正面から認めなかったことは、過去のわが国のハンセン病隔離政策の実情をまったく理解していないもの」と批判。到底受け入れられるものではないと強調しています。
最高裁は14年に患者団体などから要請を受け、調査委員会を設置。15年、第三者から調査内容について意見を聞く有識者委員会を設けました。
ハンセン病特別法廷 裁判所法69条2項は、大災害などで裁判所が使えない場合など「最高裁が必要と認めるときは、他の場所で法廷を開くことができる」と規定しています。ハンセン病を理由に最高裁が指定したものは1948〜72年の間に95件。そのうち、熊本地裁判決が2001年に隔離政策の必要性が失われたと指摘した60年以降でも27件設置されました。