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2016年3月5日(土)

女性差別撤廃へ国連で議論 日本の報告を審議

動かぬ日本政府 NGOが告発

JNNCから80人傍聴 7日にも所見

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 女性差別撤廃条約にもとづき、締約国の差別の是正状況を審議する国連の女性差別撤廃委員会は、2月に行った日本審議の結果を7日にも「総括所見」として発表する予定です。2月15、16の両日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で行われた審議には、日本から女性団体や日本弁護士連合会の代表ら約100人が参加し、審議傍聴や意見表明を行いました。審議の状況とNGO(非政府組織)の活動を紹介します。 (玉田文子)


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(写真)日本政府の報告を聞く女性差別撤廃委員会=2月16日、ジュネーブ国連欧州本部(玉田文子撮影)

 前回2009年から7年ぶりの審議には、日本婦人団体連合会や新日本婦人の会も加盟する日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC)からも80人が代表団として参加。国際女性の地位協会会長の山下泰子さんや早稲田大学教授の浅倉むつ子さん、参院議員の糸数慶子さんらも参加しました。

 委員会は、15日にNGOから意見を聞き、16日に日本政府からの報告を審議しました。

 5時間に及ぶ審議では、▽差別禁止のための法整備と推進体制▽民法改正▽権利侵害を直接国連へ通報できる制度が盛り込まれた選択議定書(条約を補完するためにつくられる独立した法的文書)の批准▽賃金格差や間接差別の是正▽貧困が広がる中で社会的に弱い立場にある女性の保護▽政治・経済などの意思決定に女性参加を高めるための暫定的特別措置▽女性への暴力の防止と人権擁護―など、進展が見られない課題に委員からの質問が集中しました。

 日本政府は、外務・法務・厚労・文科の各省と内閣府、警察庁の担当者が回答しました。

 「国内法に差別の定義を」との委員からの指摘に対し、日本政府は「憲法と男女共同参画社会基本法で男女平等や差別を規定している」と回答。民法改正については「世論の動向を注視している」、選択議定書批准については「真剣に検討中」などとし、従来の回答を繰り返す無責任な態度に終始しました。

 委員からは、「日本政府が『ジェンダー平等』にあたる用語として使用している『男女共同参画』は、人権より経済成長のための意味合いが強く、条約が求めるジェンダー平等の定義と合致していない」との厳しい指摘も。

 また、第3次男女共同参画基本計画の未達成部分について、差別是正が進まない原因の究明や具体的手だてを問う委員に対し、日本政府は、「第4次基本計画や女性活躍推進法で取り組んでいく」などと回答。差別をなくし、事実上の平等を実現するという条約締約国として意志の弱さが改めて浮き彫りになりました。

 JNNCはこれまで、委員会へのリポート提出や意見表明を行ってきました。政府報告の審議前日には、委員会によるNGOからの意見聴取とあわせて、JNNCが委員を招いて行うランチタイム説明会を開催。各団体の代表が切実な実態を告発しました。

 委員からの質問は、▽改善が見られない雇用分野の課題▽選択議定書の批准・国内人権機関設立が遅れる原因▽NGOへの政府支援の有無▽政治参加を進める選挙制度の在り方▽マイノリティー女性、離婚後の女性・子どもへの支援▽障害のある女性の教育―など、さまざまな分野に及び、関心の高さを示しました。

日本政府の本気度問われる

新日本婦人の会国際部長 平野恵美子さん

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 今回の審議では、差別をなくしジェンダー平等を実現するために、条約や勧告に沿った法律や政策を実施する政府の本気度が改めて問われました。

 民法改正や選択議定書の批准、賃金格差是正、日本軍「慰安婦」問題解決など繰り返し勧告されてきたことをなぜ実行できないのか、何が障害となっているのかを委員から問われても、日本政府はなんら具体的な回答をしませんでした。委員会は、審議の場を「建設的対話」と呼んでいますが、程遠い結果です。

 「慰安婦」問題について「日韓合意で不可逆的かつ最終的に解決した」「強制連行を示す証拠はない」「朝日新聞の誤報により誤った認識が広まった」と主張する日本政府に対して、委員たちは「人権侵害は被害者が納得して初めて解決する」「歴史は変えられない」と厳しく指摘しました。

 「慰安婦」問題をめぐるやりとりの中で、「女性活躍」「女性の人権擁護の先頭に立つ」とアピールする安倍政権の本質が浮き彫りになったと思います。

 審議に先立って行われたNGOからの意見聴取ではJNNCや日弁連のほか、3人の右派が「慰安婦」問題で発言しました。政府と右派が同じ主張をしていることが印象的でした。

 これまで同様、委員は、私たちNGOが提出したリポートをよく読み、その内容を活用して質問をしていました。女性の政治参加について質問した委員は、小選挙区制の問題を指摘した新日本婦人の会のリポートをそのまま引用し、多様な民意を反映する比例中心の選挙制度への転換が必要だとのべました。

 日本政府の姿勢は、パブリックコメントの募集や「意見を聞く会」などを行っても、形式的なものにとどまっています。差別是正のためにNGOの情報や現場の声を重視する委員会との姿勢の違いは鮮明です。

 女性・市民の声が届く政治への転換が必要だと、改めて感じました。

■女性差別撤廃条約ってなに?

 1979年に国連で採択された条約です。男女平等を達成するために法律上の平等だけでなく、慣習・慣行や人々の意識の変革のために必要な措置をとることを締約国に義務付けています。189カ国が批准。日本は85年に批准しました。

 各国の取り組みを監視するために女性差別撤廃委員会(CEDAW)が設置され、定期的に締約国の報告を審議し、結果を「総括所見」として発表します。

 今回は、日本政府の第7回と8回の報告が審議されました。

■女性差別撤廃委員会とNGO

 女性差別撤廃委員会は、締約国の実施状況の審議にあたって、政府報告には盛り込まれない差別の実態を把握するために、NGOの情報提供を重視しています。2010年には声明を発表し、NGOとの協力関係が条約の推進と履行に不可欠であると強調しています。

 委員会は、締約国の報告審議の議事にNGOからの意見聴取を位置付けています。NGOが企画する非公式のランチタイム説明会の機会も保障。NGOが委員を招き、現状報告や提言を行います。

 意見聴取や説明会は、委員会が勧告を作成するにあたって重要な情報提供となります。


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