2016年2月12日(金)
カナダ軍兵士をむしばむアフガン従軍
自殺者が62人にも
退役の1割 PTSD
アフガニスタン戦争の従軍経験があるカナダ軍の現役兵士・退役軍人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)や自殺の問題が深刻化しています。これまで62人が自ら命を絶ち、同従軍経験のある退役軍人の約10人に1人がPTSDを患っていると、カナダの全国紙グローブ・アンド・メールが報じています。 (ワシントン=洞口昇幸)
全国紙が報道
同紙電子版特集ページによると、同紙の独自取材や情報開示請求に押される形でカナダ軍は昨年11月、非公表にしてきたアフガン従軍経験のある現役兵士・退役軍人のこれまでの自殺者について、59人と発表しました。
同紙は今年1月になって軍の新資料の検証や独自取材で、自殺者数は59人ではなく、少なくとも62人と報道。このうち、54人が現役兵士でした。残りの退役軍人8人のうち昨年に5人、2014年に3人が自ら命を絶ちました。
カナダは昨年10月の総選挙で政権交代し、新たにトルドー政権が発足。トルドー首相は同年11月、国防省と復員軍人省の両大臣に、連携して戦略的に自殺防止に取り組むことを命じています。
同紙電子版の今年1月22日付によると、自殺の原因にもなるPTSDを患って障害者手当を受け取っているカナダの退役軍人1万4372人のうち、アフガン戦争に従軍(支援作戦含む)したのは3578人。この人数はカナダのアフガン派遣兵士全体の約9%にあたります。
同紙は、一般市民のPTSDの罹患(りかん)率は2〜5%であることから、アフガンへの従軍経験のある退役軍人のPTSDの割合は高いとする専門家の見解を紹介。診断から漏れた場合なども考慮すれば、現在の数字以上にPTSDに苦しむ現役兵士や退役軍人がいる可能性を指摘しています。
カナダ軍のアフガニスタン派遣 米国の同盟国であるカナダは、米国が01年から開始したアフガン戦争に参加。カナダ軍部隊は、02年から14年にかけて、アフガンに駐留しました(戦闘任務は11年に終了)。主に反政府武装勢力タリバンの強力な南部カンダハル州に配備され、タリバンの掃討作戦に従事。他方で路肩爆弾、自爆攻撃などの攻撃を受けました。同国での死者は158人(民間サイト「iカジュアルティーズ」)とされます。