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2016年1月23日(土)

国民の批判に背を向ける施政方針演説

「挑戦」 その先に何が…

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 安倍晋三首相は22日の施政方針演説で「挑戦」という言葉を、これでもかと繰り返しました。しかし、国民の批判に向き合わない自画自賛の「挑戦」の先にある危険は、すでに明瞭です。


写真

(写真)施政方針演説をする安倍晋三首相=22日、衆院本会議

TPP バラ色の未来描くが…

農業・地方経済に大打撃

 首相が「大いなる『挑戦』」として前面に掲げた環太平洋連携協定(TPP)。「我が国のGDP(国内総生産)を14兆円押し上げ、80万人もの新しい雇用を生み出」すと、未来をバラ色に描きましたが、根拠は何もありません。

 昨年10月のTPP「大筋合意」は国会決議をほごにし、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目のうち3割の品目は関税を撤廃、それ以外の農林水産物はほぼ全面的に撤廃します。

 かつてない規模の輸入自由化。日本の農林水産物は外国産との低価格競争にさらされ、農地の「大区画化・汎用化」によって就業者減・高齢化に直面する日本農業の危機的現状に拍車をかけます。

 農業の自由化路線に未来がないことは、かつてのガット(関税貿易一般協定)ウルグアイラウンド合意(1993年)以降、▽490・2万人だった農業就業人口(95年)が2014年には226・6万人へと54%減▽生産農業所得は同約4・63兆円(95年)から2・83兆円(14年)と40%減――となった事実からも明らかです。

 首相は、幅広い分野で「透明で公正なルールが共有される」とものべました。その真相は、各国の制度や仕組みを「非関税障壁」として取り除き、多国籍企業が利益を得られる共通の基準を定めることです。

 TPPは国民のくらしと日本経済に深刻な影響を与え、日本の農業、地方経済を衰退させるものでしかありません。

消費税増税 アベノミクスの「成果」誇るが…

暮らし破壊 さらに加速

 「企業収益は過去最高」「雇用は110万人以上増」

 首相は都合のいい数字ばかり持ち出して、「3年間のアベノミクスは大きな果実を生み出した」と誇ってみせました。

 国民にその実感はありません。

 企業は過去最高の収益をあげましたが、内部留保が300兆円超に積み上がっただけ。国民の所得や消費は実質で3年前を下回ったまま。非正規雇用労働者は2000万人を突破し、雇用の劣化が続いています。

 来年4月には、消費税10%への引き上げが待ち構え、「暮らしの破壊」「経済の悪循環」がさらに加速することは間違いありません。

 首相は、消費税増税について「(食品などは)10%に引き上げることなく8%に軽減」と主張。あたかも負担が減るかのような宣伝ですが、直前の国会審議では「軽減税率」を適用しても1世帯当たり年間6万2000円もの大増税となることがはっきりしました。

 どう言い繕おうとも、国民に重い負担を押し付ける増税の“痛み”は隠しようがありません。

「1億総活躍」 「老若男女誰もが」というが…

労働法も社会保障も改悪

 「女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した人も、障害や難病のある人も、誰もが活躍できる『1億総活躍』への挑戦を始めます」

 「総活躍」への挑戦をアピールした安倍首相ですが、実態は正反対です。

 労働分野では「ワーク・ライフ・バランス(生活と労働の調和)の確保」をうたいましたが、昨年、正社員化の道を閉ざし「生涯派遣」化をすすめる労働者派遣法改悪を強行成立させたのが安倍政権です。その反省は一言もなく、「多様な働き方改革」を標榜(ひょうぼう)。今国会では「残業代ゼロ法案」まで狙っており、際限のない長時間労働を労働者に押し付ける考えです。

 「介護離職ゼロ」も“名ばかり”です。

 「受け皿を20年代初頭までに50万人分整備」という中身は、既存計画に12万人分を上積みしただけで、特養ホーム待機者52万人分の解消にさえ遠く及びません。今年度の介護報酬大幅削減は、事業所の休廃業急増を招いています。

 安倍政権は、4月からの診療報酬で小泉内閣以来の1%超削減の方針を決定。参院選後には、「入院部屋代の引き上げ・対象拡大」「75歳以上の窓口負担の1割から2割への引き上げ」など、負担増・給付減の計画が目白押しです。

戦争法 「レッテル貼り」と叫ぶが…

米国と一体の参戦 準備

 「戦争法などという批判は、全く根拠のないレッテル貼りだ」

 安倍首相は色をなしてこう叫びました。しかしその実態は、米国と一体となって戦争へ参加する道そのものです。

 今国会が始まってからの論戦で▽海外唯一の自衛隊のアフリカ・ジブチ基地が、米国の要望にこたえて軍事支援をするための一大兵站(へいたん)基地化しようとしていること▽“日本版海兵隊”といわれる自衛隊の水陸機動団の出撃拠点づくりが長崎県佐世保市で進められていること――が明らかになっています。

 首相は日米同盟を「希望の同盟」と天まで持ち上げました。

 米国とあらゆる課題で力を合わせるとした姿勢は、自らこの安保法制が、米国と一体となって海外で戦争するための戦争法だと認めたに等しいものです。首相は「平和安全法制の施行に向けて万全の準備を進めます」と述べました。危険極まりない道です。

「普天間か新基地か」選択迫る

 沖縄での米軍新基地建設をめぐり、首相は、「明日の沖縄を共に切り拓(ひら)いてまいります」と“基地負担軽減”を声高に主張しました。県民の分断をはかりつつ、「世界一危険」とされる普天間基地(宜野湾市)の固定化か、名護市辺野古への「移設」=新基地建設かを露骨に迫るものです。

 これまで、基地はいらないという「オール沖縄」の声をこれでもかと踏みつけてきた安倍政権。「共に切り拓く」とはよく言えたものです。


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