2015年12月23日(水)
判決 娘に伝えたい
安全軽視の姿勢に警鐘
笹子トンネル事故 遺族ら記者会見
笹子トンネル天井板崩落事故での中日本高速道路と子会社の過失責任を認めた22日の横浜地裁判決。「子どもたちの死を無駄にしたくない」とたたかった青年5人の遺族たちが、裁判を通して訴えたかったものは―。
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「打音点検を採用せず、目視のみという過失があった」
判決理由を読み上げる市村弘裁判長をみつめ、うなずきながら聞き入った原告席の遺族たち。閉廷が告げられた瞬間、嗚咽(おえつ)がもれ、遺族らは手を取り合い、判決に笑顔を見せました。
記者会見で、上田聡(さとし)さん(63)は「インフラの老朽化に警鐘をならしたのは君たちだ」と達さん=当時(27)=に語りかけ、「判決は中日本高速道路の明確な過失を認定した。中日本の再生にとっても必要な判決だった。この日をもって生まれ変わっていただきたい」と語りました。
石川友梨(ゆり)さん=当時(28)=の父、信一さん(66)は「娘たちの命がムダではなかった。事故を契機に、さまざまな事故を防いだ功績たるや、見事な一生だったと報告したい」。
松本玲(れい)さん=当時(28)=の母、和代さん(64)は「私たちが訴えてきたことが裁判で認められたことを娘に伝えたい。でも、あなたの声が聞こえない。あなたからメールが届かない。本当に寂しく思っていることも伝えたい」と、涙をこらえながら語りました。
判決は、中日本側が老朽化したアンカーボルトの不具合を的確に発見すべき注意義務があったとしています。
玲さんの父、邦夫さん(64)は「安易な点検をやれば、組織にとって致命的なことになることが示された。中日本は判決を素直に受けとめ、控訴することがないようお願いしたい。控訴するならたたかい続ける覚悟だ」と語りました。
邦夫さんは「いい判決だったが、国の責任は言及されていない。トンネルを造ったのは旧道路公団。ずさん工事をさせて認可した国の責任が大きいとの思いはぬぐえない」と指摘。国土交通省の対応にも疑問を呈しました。
笹子トンネル事故 2012年12月2日、山梨県甲州市と大月市にまたがる中央自動車道の笹子トンネル上り線で、天井板が約140メートルにわたって崩落。走行中の車3台が下敷きとなり、9人が死亡、2人が負傷しました。青年5人の遺族は、13年2月に中日本高速道路の金子剛一社長と吉川良一専務と、中日本ハイウェイエンジニアリング東京の社長ら役員4人を山梨県警に刑事告訴し、今も捜査中です。同年5月には両社を相手どり、損害賠償を求める民事訴訟を起こしました。その後、役員4人に対する損害賠償訴訟を起こし、来年2月に判決言い渡しの予定です。