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2015年12月7日(月)

主張

杭工事データ偽装

業界任せの仕組み改善が急務

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 横浜市の大型マンションの傾斜に端を発した杭(くい)打ち工事のデータ偽装は、民間建物だけでなく病院や学校など公共施設に広がるなど深刻化しています。データ偽装は、業界トップの会社で行われていたことなども次々と判明、業界全体にまん延していることを浮き彫りにしています。

 根本にあるのは、建物の安全性確保が民間企業任せにされ、国や地方自治体が責任を負わない仕組みになっていることです。

効率優先の規制緩和で

 1998年の建築基準法改定で地方自治体の建築主事が建築確認・検査を行っていたものを、民間の「指定確認検査機関」に門戸を開放しました。建築基準を仕様規定から性能規定に転換し、柱の太さなど個々の仕様は問わずに建築物全体で性能が確保されればいいと「簡略化」したのです。効率を優先した建築行政の規制緩和が背景です。

 一定規模以上の建築物の工事の際、建築士である工事監理者が設計通りの施工で実施されているのかを確認する必要があります。しかし、多くの施工主(元請け)は自社と密接な関係の会社に任せているのが実態です。3日の参院国土交通委員会の閉会中審査で国交省は、横浜の偽装問題では、施工主の三井住友建設の3人の建築士が工事監理者で、設計者も同じだったことを認めました(日本共産党の辰巳孝太郎議員への答弁)。これでは安全性確保のチェック機能がはたらく保証はありません。

 建設業界の多重下請け構造も、責任の所在を不明確にしています。横浜の場合では元請け(三井住友建設)から1次下請け(日立ハイテクノロジーズ)、2次下請け(旭化成建材)、3次下請け業者と「多重下請け」となっており、責任が下へ下へと転嫁されていました。

 施主の三井不動産レジデンシャルは発注価格、工期などを指定し、同系列である三井住友建設に発注した際、徹底したコスト削減と厳しい工期設定を求め、それがデータ偽装につながったと指摘されており、事実解明が必要です。

 横浜のマンション杭打ちは、旭化成建材が独自に開発した工法が採用されましたが、杭本数や残土量を減らすためといわれており、工法の適否の検証も求められます。

 なにより必要なことは、徹底した調査を国と地方自治体が行い、問題の構造を明らかにすることです。3日の衆院国交委で日本共産党の本村伸子議員が「業界任せの自主点検では、住民、利用者の安全が二の次だ」と批判しました。国は姿勢をあらためるべきです。

 マンションや公共住宅で生活している居住者、病院・学校など公共施設の利用者などは、建物の安全性を信頼し購入・賃借したり利用したりしています。国民の信頼を裏切った業者の責任は重大です。

第三者のチェック体制を

 政府・国交省は全容解明と実態把握に努めるとともに、再発防止への抜本策を講じるべきです。地方自治体の検査体制を拡充し、建築主事を確保するなどの体制強化が求められます。独立性・非営利性を原則とした第三者によるチェック体制の創設が不可欠です。

 あわせて、多重下請け構造を是正し、低単価・低労働条件、利益をあげるための無理な工期短縮といった建設業界の構造そのものの改善が急務です。


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