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2015年12月1日(火)

「北国の命綱」 生活保護 冬季加算の大幅削減

撤回求め715人審査請求 母子家庭“節約もう限界”

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 自民・公明政権による生活保護費の3年連続引き下げに加え、この冬は暖房費にあたる冬季加算が大幅に削減されました。「北国の命綱」といわれる冬季加算。11月としては62年ぶりの大雪に見舞われた札幌はじめ北海道では、命を脅かされる事態に「引き下げ撤回を」と、715人(11月30日現在)が、行政不服審査法にもとづき減額の取り消しを求める審査請求に立ち上がっています。(西口友紀恵)


 その一人、札幌市厚別区の女性(50)は、昨年度月3万円だった冬季加算が今年度は同1万7800円に。減額通知に、わが目を疑いました。支給期間は従来の5カ月から7カ月に延びましたが、総額で2万5400円もの減額です。

一年中シャワー

 パート勤めで、娘(10)とアパートに2人暮らし。暖房器具は6畳2間とキッチンに石油ストーブが一つだけです。温度を最低設定にして節約していますが、ストーブを動かすのにも電気代がかかります。「プロパンガスも高いので夏冬とも娘と一緒にシャワーです。寒くても我慢するしかなく、早く布団に入るようにしている」と話します。

 冬季加算削減前も暖房を限界まで節約。この間、生活費に当たる生活扶助が年約6万2000円も削減されたため、節約分をあててきました。この女性は「娘は育ちざかり。人間らしく暮らせるよう、せめて冬季加算の引き下げを撤回してほしい」といいます。

 同区の女性(72)は、市営住宅に1人暮らし。冬季加算は月2万3160円から半分近い1万2540円に、年2万8020円減額されました。

 市営住宅は、ごみ処理場の熱を利用する地域集中暖房で、費用は定額制のため節約もできません。部屋の広さに応じた徴収で、昨年度は約7万4000円。ほかに給湯費7000円や町内会除雪費などがかかり、今年度の冬季加算の支給額8万7000円余では賄いきれません。

食事を減らして

 70歳を超えたからと保護費を月4530円も下げられました。「高齢になると支出が減る」との国の考えによるものです。減額は食費1週間分にあたるため1日2食にしたところ、体調を崩してしまいました。「交通費が出せず親の一周忌にもいけない。これ以上何を節約したらいいのか、途方にくれている」と話します。

 道などによると、定額制の集中暖房がある道営、市営の団地は札幌市内と苫小牧市内に計9団地、8243戸あります。

「命守れ」と生健会動く

写真

(写真)2013年以降の生活保護費引き下げにたいする不服審査請求書などの資料を前に話す細川さん(道生連の事務所で)

不服審査請求よびかけ

加算拡大の特別基準活用も

 安倍自公政権による生活保護の冬季加算引き下げに「黙っていられない」と多くの人たちが声を上げています。 

 札幌市の厚別区生活と健康を守る会は、区内にある集中暖房の3市営団地(8800戸)にお知らせを全戸配布し、11月23日、暖房料の相談会を開催。苦しい生活実態を訴える相談が十数件寄せられ、3人が生活保護を申請しました。

 吉村理智子事務局長は、暖房費を支払えず延滞した場合、暖房だけでなく給湯まで止められるシステムで生活そのものが成り立たなくなると指摘します。

 「冬季加算削減で生活保護を受けられる基準が下がったため、去年だったら保護を受けられた人が今年は受けられない実態も、相談を通じて分かった」と、国のやり方に憤ります。

 北海道生活と健康を守る会連合会(道生連)を通じて冬季加算減額の取り消しを求める審査請求を行ったのは30日までに696人。細川久美子道生連副会長は、「多くの人の命にかかわる非常に切実な問題です。黙っていられないと新たな人が立ち上がり、運動を励ましている」と話します。

 道生連は、冬季加算額を1・3倍に増やす「特別基準」の制度を知らせ、積極的な申請を呼びかけています。

 条件は、▽病気・障害などによる療養のために常時在宅の世帯(重度障害者加算が支給されている人、要介護度3以上の人、医師の診断書などにより福祉事務所が認めた人)▽乳児のいる世帯―です。

 血液がんで療養中の札幌市の男性は要介護3。「体温調節がうまくいかず暖房費がかさんでしまう」と不安でしたが、特別基準を申請し認められました。

 道生連によると、これまで82人が特別基準を申請し、18件が承認されました。その中には重度障害ではない精神障害2級の40代男性、妻が要介護1の80代夫婦の例もあります。

 厚別区では39世帯が、「このままでは憲法で保障された最低生活が脅かされる」と、特別基準の集団申請を行いました。


 冬季加算 冬季の暖房費などを賄うため保護費に上乗せされるもので地域や世帯人数によって支給額が異なります。厚生労働省は低所得世帯の光熱費の支出と比べて冬季加算が多いとして削減を強行。比較する低所得世帯には生活保護の対象となる困窮世帯も含まれており、その手法に厳しい批判があります。日本弁護士連合会などは、冬季加算で必要な暖房費が賄えるかどうかを検証すべきだと指摘しています。


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