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2015年6月25日(木)

2015 とくほう・特報

「戦争する国」で日本社会は

よみがえる“戦中”「生活下げて日の丸上げよ」

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 「海外で戦争する国」づくりに躍起の安倍晋三政権の下で、国家財政のゆがみが目に余ります。社会保障よりも軍事を優先、消費税は戦争税に―。今、「生活下げて日の丸上げよ」の大戦中のスローガンがよみがえってきます。(金子豊弘、杉本恒如)


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(写真)雑誌『家の光』1943年6月号の表紙(左)と、同号に掲載された富国徴兵保険相互会社(現フコク生命)の広告(右)=資料提供、早川タダノリ氏

増やし続ける軍事費

 安倍首相は訪米中の4月29日、「笹川平和財団米国」主催のシンポジウムで「日本の世界的役割」と題して講演。「(経済成長で)防衛費をしっかりと増やしていくこともできます」と発言しました。米国要人を相手に軍拡をめざす決意を披露したのでした。

 すでに安倍政権は、2013年12月17日の閣議で外交・安全保障の指針となる「国家安全保障戦略」を閣議決定し、地球規模で軍事的関与を強めていくことを宣言しました。同時に14年度から18年度の5年間の「中期防衛力整備計画」(中期防)を決定。総額は24兆6700億円にのぼります。前の中期防に比べ、1兆1800億円増の計画です。この大軍拡計画には、アメリカの海兵隊のような殴り込み部隊である「水陸機動団を新編する」ことがうたわれ、水陸両用車やオスプレイ17機の購入も盛り込まれました。アメリカ側は、オスプレイ17機と関連装備等を含め総計30億ドル(約3700億円)の金額を提示しています。

 中期防2年目に当たる15年度予算では、一般会計で4兆9801億円、復興特別会計を含めると5兆130億円の軍事費が計上されました。当初予算ベースで初めて5兆円を超えました。「水陸機動団」創設に向けてオスプレイ(5機516億円)や水陸両用車(30両203億円)を調達することになっています。

 「国家安全保障戦略」は、「産学官の力を結集させて、安全保障分野においても有効に活用」することや「高等教育機関における安全保障教育の拡充・高度化」を強調。学問・教育分野での軍事化も同時に進めようとしています。

財界発 社会保障削減

 戦争法案が国会で審議入りした5月26日。軍事と社会保障の関係を象徴する発言がありました。経団連の榊原定征(さかきばらさだゆき)会長が、二つの要求を政府に突きつけたのです。

 一つは戦争法案を押し通すこと。記者会見で強調しました。

 「国民理解に対する努力を、もっとしていただきたい」「今国会中に成立をするという運びになることを期待したい」

 もう一つは社会保障費の削減です。同日に政府が開いた経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で、「改革項目」を列挙して次のように迫りました。

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 「ここに挙げた項目について、取捨選択ではなく、全てをやり切っていただきたい」「2016年度から2018年度、この集中改革期間の3年間に、この全てを始動させる必要がある」

 医療・介護・年金の抜本的切り下げを迅速にすべてやり切れ、というのです。6月22日の経済財政諮問会議で政府が示した「骨太の方針」(経済財政運営の基本指針)の素案は、まさに財界の要求に沿う内容となりました(表)。「社会保障は歳出改革の重点分野である」と断言して削減の標的にする一方、軍事については「実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備」する方針を掲げました。

 財務省はこの間、救急車の有料化まで検討課題にあげています。

 東北大学の日野秀逸(しゅういつ)名誉教授は指摘します。「大砲かバターかという政策の優先順位の問題は、現在の焦点です。軍事を優先し、軍需産業を優遇する。社会保障はじゃまだとみて、切り捨ての1番目に置く。これが安倍政権の優先順位です」

 戦争法案の行き着く先を考えたとき、頭から離れないのは戦争中の日本の経験だと日野氏はいいます。

 戦争の拡大に伴って軍事費は膨れ上がり、1944年には国家予算に占める割合が85%を超えました。軍の大量発注で物価は上がり、国民生活を圧迫しました。重税でもまかなえずに戦費の財源は国債に求められ、「生活下げて日の丸上げよ」と国債購入をあおる広告が躍りました。戦後の急激な物価上昇で戦時国債は紙くず同然になりました。

 「戦争による人的、物的、貨幣的な損耗は天文学的な数字になります。こうした損耗や出費を避けることのメリットは計り知れません」

 一例として日野氏はスウェーデンをあげます。1814年以来、戦争に直接参加せず、第1次・第2次世界大戦でも中立を維持しました。

 「このことがもたらした莫(ばく)大な『財産』を元手の一部にして、スウェーデンは世界に冠たる社会保障国家を築いたのです。憲法9条(戦争放棄)と25条(生存権保障)を守り、平和と社会保障を基盤としてこそ日本経済は発展し、幸福な暮らしを築けます」

消費税が「戦争税」に

 社会保障費を真っ先に切り捨てている安倍政権。いったい消費税の増税分はどこに消えるのでしょうか。

 「2015年度の軍事費は史上最大。戦争となれば際限なく膨張します。消費税が戦費調達財源になる危険性がいよいよ増している」

 消費税をなくす全国の会の木口力事務局長は、こう指摘します。

 15年度予算でも、消費税収は「流用」されています。消費税増税による増収は8兆2000億円にのぼるのに、社会保障費の増額(「充実」)に使うと政府が説明しているのは1兆3500億円。わずか16%です。

 残りは社会保障「安定化」の名で、所得税や法人税などで賄ってきた財源を消費税に置き換えるだけのこと。これによって浮く財源を、大企業減税や軍事費に回しています。事実上、消費税増税分の「流用」です。

 安倍政権は、消費税率の10%への引き上げを2017年4月に実施する法律を強行成立させました。同時に「骨太の方針」素案では、軍事力を「効率的に整備」する方針を掲げ、軍拡路線を鮮明にしています。

 木口さんは強調します。「戦争する国にするための財源として消費税のいっそうの増税がねらわれています。消費税を戦争税にさせてはなりません。『戦争法案』を廃案にし、10%への消費税増税をやめることを強く求めていきます」

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(写真)日本の軍事費(SACO・米軍再編関係経費を含む)は、安倍政権が発足した2012年度以降、急激に増えています(グラフ)。例外的に?年度が突出しているのは東日本大震災への対応で3回の補正予算に軍事費を盛り込んだためです。安倍政権は一般会計に加え、東日本大震災復興特別会計と補正予算という三つの財布を使って軍事費を増やしています。補正予算に通常兵器の購入費も盛り込むようになり、額が膨れ上がりました。こうして軍事費の総額は年間5兆円を超すようになっています。


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