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2015年5月28日(木)

川内原発審査終了

住民の不安置き去り 再稼働 先にありき

新基準施行後初めて

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 原子力規制委員会は27日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の重大事故対策の体制などを定めた「保安規定」を認可しました。川内原発1、2号機は、13年7月の新規制基準施行後初めて、基本設計などの許認可で、審査を終了したことになります。

 巨大噴火の影響が心配されている川内原発の審査をめぐっては、学会から火山の審査基準を見直すよう求められるなど多くの問題が浮き彫りにされました。しかし、規制委は見直していません。住民の不安は置き去りにされたままで、地元などからは「世論を無視して再稼働は許されない」との声が上がっています。

 保安規定は、原発の運転や管理の方針を定めた文書で、重大事故に対応するための体制整備などを定めたものです。

 巨大噴火による影響について、九電は火山活動を監視し、巨大噴火への発展の可能性があると評価される場合には、社長の指示で原子炉を停止、燃料を搬出します。しかし、燃料の搬出先は、その評価がされた場合に検討することになっており、具体的な計画は示されていません。

 九電は審査を終了したとして、3月から実施中の使用前検査を経た後、まず1号機について、7月下旬の再稼働を、2号機は9月下旬をねらっています。

欠陥・問題点浮き彫り

 一昨年施行された新規制基準の下で九州電力川内原発1、2号機の基本設計や工事計画、保安規定が認可され、審査が終了しました。しかし、新規制基準をめぐっては、その欠陥や問題点が浮き彫りになっています。

避難計画は審査対象外

 鹿児島県では、原発事故を想定した対策を求められている30キロ圏の9市町に約21万4000人(約9万7000世帯)が暮らします。しかし、事故が起きた場合の住民の移動手段をはじめ入院患者や施設入居者の要援護者の避難先確保などの困難さが指摘されています。しかし、住民の安全にとって肝心の避難計画は審査の対象外です。

 米国では、1979年のスリーマイル島原発事故後、米国原子力規制委員会が緊急避難計画を規制の対象にしており、避難計画が実現不可能などの理由で営業運転に入れずに廃炉になった原発もあります。これと比べて、日本の新規制基準が「世界最高水準」(安倍首相)とは程遠いものです。

火山対策に学会が批判

 川内原発の周辺には過去に巨大噴火を起こした火山が複数あります。3万年前の姶良(あいら)カルデラの噴火で火砕流が到達した可能性を九電が認めています。九電や規制委は、川内原発に火砕流が到達するほどの巨大噴火が今後数十年の間に起きる可能性は「極めて低い」と主張。起きるとしても前兆を把握できると説明しています。しかし、火山学者からは、巨大噴火は国内で観測の経験がなく、予測できないとの指摘がされ、日本火山学会は昨年11月、巨大噴火予測の限界や曖昧さを踏まえ、審査基準の「火山影響評価ガイド」の見直しを求めています。審査基準に根本的な疑問が突きつけられた形ですが、規制委は見直しをしようとはしていません。

審査ずさん明らかに

 適合性審査のずさんさも明らかになっています。

 九電の重大事故対策が有効かどうかを評価する際、旧原子力安全・保安院や旧原子力安全委員会が電力会社とは独立に行っていたクロスチェック(異なる角度からの点検)解析を規制委が厳正に実施していません。専門家から「審査で適合したといっても、再稼働の条件とはなりえない」と批判されています。

 今年4月、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を認めないとした福井地裁の仮処分決定で、「新規制基準な緩やかにすぎ、これに適合しても原発の安全性は確保されていない」と断じました。東京電力福島第1原発事故の原因究明も尽くされていません。

 鹿児島県民の世論調査で、59%が再稼働に反対です(南日本新聞1日)。その理由の一番が「安全性に疑問がある」です。住民の声にこたえ、再稼働はやめるべきです。

 (「原発」取材班)


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