「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2015年4月21日(火)

2015 焦点・論点

「戦後70年司教団メッセージ」の精神

カトリック東京大司教 岡田 武夫 さん

憲法の「不戦の理念」 私たちの宝 平和の実現へ 世界の人々と協力

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 ―日本カトリック司教団が2月に発表した、戦後70年の司教団メッセージが注目されています。「憲法の不戦の理念」を支持し、特定秘密保護法や集団的自衛権行使の動きを批判していますね。

写真

(写真)おかだ・たけお 1941年千葉県生まれ。東京大学法学部卒。2000年白柳誠一大司教(のち枢機卿)のあとをついで東京教区大司教に。現在、日本カトリック司教協議会会長。

 今年が第2次世界大戦終結70年という節目の年であり、最近の政治の動きが平和を脅かす心配を感じさせるものであることから、通常なら8月15日の終戦記念日に向けて出すものですが、早めに発表したいということになりました。司教全員が一致して協議会のメッセージとして採択したということです。

 このメッセージはローマ法王にも伝えました。

 どんな宗教も平和を説き、平和のために働くことを進めていると思います。キリスト教の教えも平和を大切にします。「平和のために働く人は幸い。その人は神の子と言われる」とイエスは言われました。しかし、教会の歴史を見ると必ずしも、教会や教会のメンバーがそのためによく働いたとはいえない事実が見られます。私たちは、われわれの歴史を振り返りながら、改めて平和のために働く決意を新たにしようと考えるわけです。

 1986年にこの大聖堂(東京カテドラル聖マリア大聖堂)にアジアの司教の代表者が集まりましたが、私の前任者である白柳誠一大司教は、アジア・太平洋戦争による2千万を超える人々の死への責任を告白し、許しを願いました。また1995年、戦後50周年にあたり、当時の司教全員で出した「平和への決意」というメッセージでは、日本軍による残虐な破壊行為、元日本軍「慰安婦」問題にも言及し、謝罪を行い、償いの責任を表明しています。

 2000年には時の教皇ヨハネ・パウロ2世が、第2次世界大戦について教会がそれを阻止する努力が足りなかったと言われました。人間の基本的な価値、基本的な人権が侵害され、そして全体主義政権が成立して、国民の自由や権利を束縛し、外国への侵略を行おうとしていたときに、その流れを見過ごす、あるいは気がついても阻止することができなかった。教会がもっとはっきり発言すべきであった、というメッセージでした。

平和は辛抱強いたたかいの成果

 ―今回のメッセージにもそうした反省と決意が貫かれています。

写真

(写真)東京カテドラル聖マリア大聖堂=文京区

 悪に対して悪をもってする、暴力に対して暴力をもってするのではなくて、平和は悪が善によって打ち負かされるときのみもたらされる辛抱強いたたかいの成果であり、非暴力による対話によってこそ平和を築くことができます。憲法9条はこの理想を述べている私たちの宝だと思います。これはキリスト教の精神からいって当然のことです。

 憲法に恒久平和を掲げて、曲がりなりにも70年守ってきたことは誇りうることです。この70年間でほかのことでは反省すべきことはありますが、戦闘による殺りくをしないで済んでいる。それは各国が日本をそういう憲法をもつ国だとわかっているからではないですか。

 ―昨年7月に集団的自衛権行使容認の閣議決定にたいし安倍首相あての抗議声明を司教協議会名でだされました。その中で「対話や交渉によって戦争や武力衝突を避ける希望を失ってはならない」といっていますね。

 われわれはそう信じています。それがわれわれの信念です。日本が行ったアジアでの侵略行為があり、日本にも広島、長崎の原爆投下、東京大空襲があり、ほかにもいろいろな悲惨なことがありました。もう戦争はこりごりのはずだと思っていましたが、いろんな理由をつけてまた戦争ができるようにする動きが現れています。

 今回のメッセージを審議する時に、非常に特色のある発言がありました。沖縄に那覇教区があり司教さんがいらっしゃいます。その司教が毎日体験している米軍基地問題です。これだけ沖縄の人が叫んでいても政府は耳を傾けようとしない。アメリカの要望に応える方向で、結局、沖縄の人の苦しみに耳を貸さないという怒りを彼は持っています。それでメッセージには「沖縄県民の民意をまったく無視して新基地建設が進められている」「平和を築こうとする努力とは決して相容(い)れません」と盛り込んであります。

 ―戦前からの歴史問題を考えたとき、東アジアの国ぐにや国民との相互理解や交流が必要です。その点ではどうですか。

 1996年から、日本と韓国のカトリック教会の司教が年1回会い交流しており、すでに20回を数えました。参加は自由で、最初は数人でしたが、今はほとんど全員が参加し、交互に訪問しています。最初は両国の歴史教育の違いなどについて専門家の意見を聞いたりしたのですが、次第に東アジアの国として共通の問題、例えば、原子力発電の問題、あるいは自殺者の問題などについて情報交換して助け合おうということになっています。

 またご存じのように、フィリピンからはたくさんの移住者、滞在者がいます。そういう方々に生活上支援をしながら友好親善に努めるために教会あげて努力しています。衣食住のことから、滞在の法的な問題などで保護・支援しています。

核兵器・原発は現代の「バベル」

 ―東日本大震災につづく東京電力の福島第1原発事故のときにも、司教全員でただちに原子力発電所を廃止しましょうというメッセージを出しましたね。

 旧約聖書に、バベルの塔の話があります。人間が天に届くような塔をつくろうとして、神様がそれをやめさせたので、お互いに言葉が通じなくなったという形で説明されています。バベルの塔は人間の神に対する反抗と思い上がりということの例えです。現代では核兵器、原子力発電がそれにあたります。

 3月にローマに行きまして、フランシスコ教皇と日本の司教全員が自由で率直な懇談をしました。そのとき教皇が人間はバベルの塔を建てているようなものだと現代文明批判をおっしゃっていました。原発、武器の製造をはじめ人間の今の愚かな行為についてでした。

 ―日本共産党は思想・信条が違っても「海外で戦争をする国」づくり、原発再稼働、沖縄新基地建設に反対するなどの課題で共同できるとして追求してきました。司教団のメッセージも平和を実現する協力を呼びかけています。

 日本のカトリック教会は小さな存在ですが、諸教派のキリスト者、諸宗教の信仰者、さらに世界の平和を願う人びととともに平和の実現へ働き続けると決意を表明しています。

 私は日本共産党とは思想的に異なりますが、共産党が日ごろ言っていることには賛成です。改憲の動きの強まりのなかで、平和の擁護を貫いている共産党にはがんばってもらいたいと思います。

 聞き手・山沢猛

 写 真・若林明

図

見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって